「在任中改憲」表明 参院選争点化確実に 同日選も視野 - 毎日新聞(2016年3月3日)

http://mainichi.jp/senkyo/articles/20160303/k00/00m/010/115000c

安倍晋三首相が2日、「在任中」の憲法改正を目指す考えを表明し、夏の参院選での争点化が確実となった。首相は衆参同日選も視野に、参院改憲発議に必要な3分の2の議席を確保する考えで、結果次第では改憲が現実的な政策課題となる。【高橋克哉、横田愛
「この場に首相として立っている。草案を解説するのは控えたい」。首相は2日の参院予算委員会自民党憲法改正草案に盛り込んだ「国防軍」について問われ、こう答えた。改憲への意欲を強調する首相だが、改憲項目に関する発言は控えめだ。1日の衆院予算委でも「どの条文から改正するかは、憲法審査会の議論が収れんすることを期待している」と語った。
夏の参院選は首相の2018年9月までの任期中、最後の参院選となる。首相が改憲をより確かにするため視野に入れているのが衆参同日選だ。与党に追い風が吹いた状態で同日選を行えば、両院の議席の積み増しが期待できる。自民党幹部は「同日選で参院議席が増えるなら、首相は衆院解散に踏み切るだろう」とみる。
衆参の憲法審では各党が改憲項目についてすでに意見表明した。自民党憲法審とは別に、参院選後に改憲に前向きな政党だけで協議会を設けることを検討している。改憲発議に必要な3分の2以上の賛成を得られる項目を絞り込み、条文を作成して憲法審の議論をリードする思惑からだ。
一方、憲法改正に慎重な公明党には戸惑いがある。同党の石田祝稔政調会長は2日の記者会見で「『在任中』という言葉はちょっと唐突な感じがする」と発言。「(残り任期が)2年半ぐらいあるが、現実的なのか」とけん制した。
公明党は昨年、安全保障関連法の成立で自民党と歩調を合わせたが、支持者への説明に苦慮。参院選改憲が争点になるのは避けたいのが本音だ。ただ、改憲は首相の悲願で、「参院選後に国会で議論を深めること自体は否定しない」(幹部)という声もある。
一方で、別の幹部は「野党第1党の民主党も賛成して幅広い合意が得られるようにすべきだ」と主張。首相が改憲内容への言及を避けるのも、こうした慎重姿勢に配慮する側面もありそうだ。
民主党など野党は首相主導の改憲論議に反発を強めている。同党の枝野幸男幹事長は2日の記者会見で「どの条文を変えたいかという話を抜きに『変えたい』というのは論理矛盾だ」と批判した。