震災復旧談合 被災者への裏切りだ - 東京新聞(2016年3月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016030102000147.html
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震災復興の高速道路復旧工事で談合があった。東京地検特捜部は独禁法違反にあたるとして関係会社などを起訴した。税金が使われている工事だ。被災者はむろん、国民に対する裏切り行為だ。
東日本大震災で大きく傷ついた高速道路の復旧のため、東日本高速道路は二〇一一年九月から一二年十二月にかけて、十七路線で路面の段差や脱落した橋桁などの修復工事を行った。
そのころ、一通の投書が東京・霞が関にある公正取引委員会に届いたという。一一年のことだ。その年に入札があった工事で、舗装各社の担当者が談合していたことが記されていた。
投書に名前が登場する舗装業者の部長を公取委が呼び出して、問いただすと、「(談合の方法を)前任者から引き継いだ。かなり昔からやっていたと思います」と答えたそうだ。
高速道路の復旧工事ばかりでなく、以前から東北の道路工事で談合が繰り返されていたことも打ち明けたとされる。このため強制調査に踏み切る方針が固まって、昨年一月に各社に家宅捜索に入り、担当者の聴取を進めた。今年一月にも東京地検特捜部とともに、家宅捜索している。
今回、起訴されたのは、道路舗装を行う十社とその担当者十一人だ。東北、常磐磐越自動車道など九路線十二件の復旧工事が対象だ。落札総額は約百七十六億円だ。最初に自主申告したとみられる一社は起訴を免れた。
「震災後の混乱の中、受注調整で復興をスムーズに進めるためだった」「震災後は資材や労働力の確保が難航していた。工事を迅速に進められるよう業者間で受注調整した」「舗装の原材料が値上がりしており、工事を高値で受注したかった」−。業界側はそんな言い訳をしているようだ。
だが、予定価格に対する落札額の比率は平均で約95%と以前よりも高かった。つまり、税金が無駄に使われた結果に変わりはない。民営化後は高速道路の工事は利用料金が財源になっているが、今回の工事は国の復興予算が使われている。国民のお金が業者の不当な利益になっているわけだ。
しかも、談合を繰り返すことで、利益を重ねていたとみられる。悪質性があり、刑事責任を問うのは当然といえよう。
一連の入札が実施される前には、発注元が談合をしないとの誓約書を書かせていたという。偽りの誓いなら、なおさら許せない。