首相「働く女性増えてうれしい悲鳴」 待機児童対策、加速を:核心 - 東京新聞(2016年2月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2016021802000142.html
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保育施設に入れない待機児童の増加をめぐり、安倍晋三首相が「働く女性が増えたから無理もない。うれしい悲鳴だ」と発言し、母親らが反発している。子どもを預けて働く人にとって、待機児童問題は深刻な悩み。「浮かれている場合ではない」と対策の加速を求める声が出ている。 (我那覇圭)

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首相が発言したのは、昨年十一月の民間主催の講演。「待機児童は前年より増えてしまった。(第二次安倍)政権発足以来、女性の就業者が九十万人以上増えたから無理もない。その意味でうれしい悲鳴ではあるが、待機児童ゼロは必ず成し遂げなければならない」と述べた。
発言に加え、首相が根拠として持ち出した数字の妥当性も絡み、今国会で論争に発展した。二〇一二年十二月に政権復帰した首相は、一二年十〜十二月と一四年の同期間という三カ月間の平均値を比較。女性の就業者数は全体で約九十一万人、子育て世代の二十五〜四十四歳は約二十万人増えたと説明した。
◆年平均は横ばい
これに対し、民主党山尾志桜里衆院議員は年平均の数値を示し、一二年と一四年はほぼ横ばいだと指摘し「子どもが保育園に入れないのは、働く母親にとって心の底からの悲鳴だ」と追及した。首相は「女性が働きたくても働けない状況から、働ける状況になったということを表現した」と反論したが「うれしい悲鳴」は商売繁盛など、予想以上に喜ばしい出来事ながら多忙な様子を言い表す用語。首相の意には反するだろうが、意味としては女性の就業だけでなく待機児童の増加も歓迎したようにも受け取れる。
東京都足立区役所に非正規職員として勤める馬込奈穂子さん(39)は、自らの経験から「首相の発言は短絡的で問題を軽く考えている」と憤る。
馬込さんは障害者の相談業務に携わりつつ、五歳の長男と三歳の長女を育てる母親。区内に転居した翌年に長男を国の基準を満たす認可保育所に入れたが、長女は昨年四月まで約二年間、入所申請を五回断られ「目の前が真っ暗になった」という。
やむを得ず長女を預けた都の認証保育所は、施設が国の認可基準より狭いのに、保育料は月十万円で認可保育所の三倍以上。いまは認可保育所に通っているが、共働きの核家族で周りに頼れる人はなく「選択肢はなかった」と振り返る。
厚生労働省によると、待機児童は受け皿の拡大によって一四年まで減少が続いた。一五年に増えたのは、四月から子ども・子育て支援新制度が始まり、自治体に子どもを預けやすい環境づくりなどを促した結果、潜在的な需要が掘り起こされたことが大きい。
依然として保育施設が不足していることは、政府も自覚している。昨年十一月、一七年度末までに新たに増やす施設の定員目標を、従来の四十万人から五十万人に上方修正した。
だが、いま保育所が必要な人は待ったなしだ。東京都杉並区で一三年に大量の待機児童が出た際、働く母親らの代表として区に対応を迫った都子育て支援員の曽山恵理子さん(39)は「首相は『うれしい悲鳴』などと言って浮かれている場合ではない」と指摘する。
「特に都市部での入所は難しく、入所できても就業の不安は消えない。政府は子育てと仕事が両立しやすいように、不足する保育士の待遇改善や男性の育児参加を促す長時間労働の是正などを急ぐべきだ」