自衛隊が監視、違法性確定 国が上告断念 市民プライバシー侵害 - 東京新聞(2016年2月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021702000134.html
http://megalodon.jp/2016-0217-0910-00/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021702000134.html

自衛隊情報保全隊イラク派遣反対活動を監視された東北地方の住民が国に損害賠償などを求めた訴訟で、公表していない本名や勤務先の情報収集はプライバシー侵害で違法だと認定し、男性一人に十万円を賠償するよう国に命じた仙台高裁判決に対し、防衛省は十六日、上告を断念することを明らかにした。
この男性も上告していないため、上告期限の十七日午前零時で、自衛隊の監視行為の違法性を認めた判決が確定した。自衛隊は活動の在り方の見直しが迫られることになる。
防衛省は「主張の一部について裁判所の理解が得られなかったが、内容を慎重に検討した結果、上告しないことにした」とのコメントを出した。
男性は取材に「今後は自衛隊が市民を監視しないと約束したわけではなく、安心はできない」と話した。住民側弁護団事務局長の小野寺義象(よしかた)弁護士は「国が違法行為を認めたことになり、非常に画期的だ」と語った。
提訴のきっかけは、共産党が二〇〇七年に公表した情報保全隊の内部文書で、住民の活動の日時や場所が書かれていた。この男性については、反戦ライブをした場所に加え、本名、勤務先まで記されており、高裁判決は「自衛隊員らに有意な影響があるとは考えにくい。本名などを探索する必要性は認めがたい」と判断した。
住民側は、全員への賠償や監視差し止め請求が認められなかったのを不服として、七十五人が十五日に上告したが、この男性は含まれていない。
一二年の仙台地裁判決は男性を含む五人への賠償を命じたが、高裁は地方議員だった四人の請求を退けた。住民側は監視活動を違憲だと主張しているが、地裁、高裁ともに憲法判断は示していない。