甘利・前経済再生担当相 現金授受問題 秘書と接触、記録残さず 改革法では規定 国交・環境省 - 毎日新聞(2016年2月3日)

http://mainichi.jp/articles/20160203/ddm/041/010/130000c

甘利明前経済再生担当相の現金授受問題で、国土交通省環境省が甘利氏の秘書らとのやり取りについて、法律が定める記録を残していないことが分かった。第2次安倍内閣は法に基づき、政治家と官僚の不透明な関係を防ぐため各省庁に記録を作らせることも申し合わせているが、事実上、機能していなかった。
国家公務員制度改革基本法は、官僚が国会議員やその秘書と接触した場合、「記録の作成、保存」と「その情報を適切に公開するために必要な措置」をとるよう規定している。
また、2012年末に発足した第2次安倍内閣は初閣議の後の閣僚懇談会で、同基本法と公文書管理法に基づき、「政官接触」の記録・公開について「大臣等の指揮監督の下に適切に対処する」ことを申し合わせた。
それ以降、内閣改造のたびに最初の閣議で「指導力を発揮」するよう菅義偉官房長官が各閣僚に要請している。
甘利氏の秘書らは昨年7月、都市再生機構(UR)と紛争中の千葉県の建設会社に問題解決を頼まれ、URを所管する国交省の住宅局長(当時)を訪問。電話や面談で計3回やり取りした。秘書らは14年9月25日には環境省の課長らとも面談した。
だが、両省は毎日新聞の取材に、これらの接触について記録を残していないことを明らかにした。
その理由について、国交省住宅局は「閣僚懇の申し合わせは『対応が極めて困難なものについては大臣に報告する』などと定められている。今回はUR担当者の連絡先などの問い合わせだったので、該当しないと判断した」と説明した。ただ、閣僚懇の申し合わせは大臣への報告とは別に接触記録の「作成・保存」も定める。同局は「規定は『大臣などの指揮監督の下に適切に対処』とあり、必ずしも全てを記録するということではない」としている。
一方、議員会館で秘書らと面会した環境省廃棄物・リサイクル対策部の山本昌宏企画課長(当時は産業廃棄物課長を兼務)は取材に「大事な話なら面談記録を作るが、今回の内容はそれに当たらず、1回限りだったこともあり、記録は残していない」と述べた。
政官接触記録について、基本法を所管する稲田朋美行政改革担当相(当時)は14年4月の参院内閣委員会で「大臣らの指揮監督の下、適切に実施されていると認識している」と答弁。各省庁に任せていることを明らかにしている。
だが、第1次安倍・福田両内閣で行革担当相補佐官として公務員制度改革を担当した原英史(えいじ)氏(現・政策工房社長、元経産官僚)は「まさに今回のような事態を防ぐために、すべての政官接触を公平・正確に記録・開示しようというのが基本法の趣旨だ。基本法にも閣僚懇の申し合わせにも違反していると言わざるを得ない」と指摘。「本来は政府として制度を整備する義務があるはずだ。『表に出したくない』と官僚は思うのかもしれないが、そもそも官僚も政治家も税金で活動している。国民にチェックされて困ることがあってはならない」と話す。
一方、独立行政法人のURは甘利氏側との面談内容を記録し、生々しいやり取りが明らかになった。URは「担当者が個人的に作っていたメモ」(広報室)とし、政治家との接触を常に記録しているわけではないという。【日下部聡、樋岡徹也】

関連サイト)
甘利氏「口利き問題」の背景 官僚と政治家の接触は記録保存されたのか(高橋洋一さん) - ZAKZAK(2016年1月30日)

(1/2)http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160130/dms1601301000003-n1.htm
(1/2)http://megalodon.jp/2016-0203-0937-41/www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160130/dms1601301000003-n1.htm

今回のような口利き問題は十分に想定された。そのため、国家公務員制度改革基本法第5条第3項第一号で「職員が国会議員と接触した場合における当該接触に関する記録の作成、保存その他の管理をし、及びその情報を適切に公開するために必要な措置を講ずるものとすること」と定めている。

(2/2)http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160130/dms1601301000003-n2.htm
(2/2)http://megalodon.jp/2016-0203-0938-17/www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160130/dms1601301000003-n2.htm

これは、公務員にとっては政治家の口利きからの予防である。実際、英国では、政治家と官僚の接触を原則として禁止しているので、日本のような口利きという問題は生じない。そこで、当初の案では、政治家と官僚の接触禁止を盛り込んでいた。しかし、国会での修正によって、政治家と官僚との接触を禁止しないまでも、その記録を取って公開することとした。そうした行為によって、政治家の口利きから公務員を守ろうとしたわけだ。