首相靖国参拝訴訟 弁護団「裁判所は憲法判断から逃げた」- 毎日新聞(2016年1月28日)

http://mainichi.jp/articles/20160128/k00/00e/040/222000c

安倍晋三首相が2013年12月に靖国神社を参拝したことを巡り、戦没者の遺族ら765人が憲法の定める政教分離の原則に反し、近隣諸国との関係悪化で平和に暮らす権利(平和的生存権)を侵害されたなどとして、安倍首相や国、靖国神社に損害賠償などを求めた訴訟。28日の大阪地裁(佐藤哲治裁判長)判決は違憲かどうかの判断に踏み込まず、参拝の公私の区別についても触れなかった。「裁判官は良心を持ってほしい」「戦争への道が開かれれば裁判所にも責任がある」。判決を聞いた原告や支援者からは怒りや落胆の声が上がった。
「請求をいずれも棄却する」。約90人の傍聴人が詰めかけた地裁202号法廷。佐藤哲治裁判長が判決要旨を読み上げると、「ナンセンス」「おかしい」などと抗議の声が上がった。言い渡し後、しばらくは裁判官へのやじがやまず、法廷は異様な雰囲気となった。
原告弁護団が地裁玄関前で「不当判決!」と記された紙を掲げると、支援者らから「何でだ」などと抗議の声が上がった。大阪府吹田市の無職、武田保夫さん(70)は「このような判決が続くと、見方によっては戦前の軍国主義に戻ってしまうのではと思う」と話した。
判決後、原告側は大阪市内で記者会見し、父親が第二次世界大戦で戦死した元教員、松岡勲さん(71)=大阪府茨木市=は「裁判所は憲法を守るところではないのか」とがっかりした表情で話した。小泉純一郎元首相の靖国参拝違憲と判断した福岡地裁の訴訟でも原告だった住職、木村真昭さん(65)=福岡市=は「判決は安倍首相の代弁をしていた」と憤った。原告弁護団の中島光孝弁護士は「裁判所は憲法判断から逃げた。合憲にもなりえるとの含みがあり、極めて後退した判決だ」と批判した。【三上健太郎、原田啓之、藤顕一郎、岡村崇】

靖国訴訟、憲法判断せず 13年の安倍首相参拝、原告敗訴 - 共同通信社(2016年1月27日)