<鹿児島強姦事件>「敗北」県警と福岡高検 内部から批判も - 毎日新聞(2016年1月27日)

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◇岩元さん、無罪が確定
検察に信義則違反、警察に証拠隠しの可能性を突き付けた判決が確定した。鹿児島市で女性に暴行したとして強姦(ごうかん)罪に問われた元飲食店従業員の岩元健悟(けんご)さん(23)の裁判で検察が26日、上告断念を表明した。逆転無罪を言い渡した福岡高裁宮崎支部の判決(12日)は鹿児島県警と福岡高検によるDNA型鑑定を厳しく指摘した。双方の幹部は「敗北」してもなお誤りを認めないが、内部からも批判の声が上がる。
控訴審での検察側の鑑定の必要性も相当性も認められなかった」。福岡高検の保坂直樹刑事部長は26日、上告断念を発表した後、苦渋の表情をみせた。
控訴審で検察側は裁判所や弁護側に無断でDNA型鑑定を実施した。控訴審判決はこの点を問題視し「秘密裏に鑑定を行い、有利な方向に働く場合に限って証拠請求を行う意図があったとうかがわれ信義則違反だ」と批判。これに対し、保坂刑事部長は「検察官は立証責任があり、訴訟の進行状況に応じて補充捜査が必要になる」と繰り返し、誤りを認めなかった。
しかし、検察内部では、疑問視する声も多い。ある検察首脳は「自分なら鑑定の実施を裁判所や弁護士に事前に伝える。(法律上は補充捜査が許されているので)違法ではないが不適切だ」と語った。別の幹部も「県警の鑑定を過大評価し、油断があったのではないか。教訓にすべき点はある」と分析した。
識者からは第三者による検証を求める声もあるが、保坂刑事部長は「考えていない」と厳しい口調で答えた。
また、控訴審判決は、県警の鑑定についても鑑定経過を記したメモや使用したDNA溶液を廃棄していたことから「証拠隠し」の可能性に言及した。
実際には岩元さん以外の型が検出されたのに、その鑑定結果を隠したのではないか、という指摘だ。本当なら冤罪(えんざい)を招いた2003年の鹿児島県議選を巡る公職選挙法違反事件(志布志=しぶし=事件)に続く失態だ。
鹿児島県警幹部は26日夜、取材に対し「適正に行われた」と証拠隠しを否定。ただ、メモなどを捨てた鑑定手続きのあり方を変える可能性には言及し、「検証も検討する」と含みを持たせた。九州地方のある警察幹部は「判決の指摘はもっともだ。鑑定は捜査に大きな威力を発揮するだけに、手続きに少しの疑いも残らないようにしなければならない」と話した。【志村一也、鈴木一生】