18歳主権者 知を磨こう 高3「対話ネット」論文に小泉信三賞 - 東京新聞(2016年1月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016011002000106.html
http://megalodon.jp/2016-0110-2108-48/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201601/CK2016011002000106.html


教育、安保、憲法…。全国の高校生や大学生がインターネット上で時事問題を議論する「ぼくらの対話ネット」を、北海道旭川東高校三年生の田中駿介さん(18)らが昨年秋に始めた。選挙権年齢の十八歳以上への引き下げに向け、主権者としての足腰を自分たちで鍛えるためだ。取り組みをまとめた田中さんの論文は、慶応大学の全国高校生小論文コンテストの最優秀賞、第四十回「小泉信三賞」に選ばれ、授賞式が十日、東京都港区の同大で開かれる。 (早川由紀美)
国立大の一部文系学部の廃止や見直しを求める文部科学省の通知が「文系軽視」と論議になっていた昨年十月、北海道千歳市の高校生源島(げじま)菜月さん(17)はフェイスブック(FB)で、「ぼくらの対話ネット」の仲間に向け投稿した。
<理系の人が、芸術や文学といった文系の分野をまったく理解しなかったら、それはコンピューターのような存在になってしまうのだと思います(後略)>
これに、親指を上げた「賛成」マークが続けて投稿された。翌朝、岩手県の男子高校生が書き込んだ。<まさしく。文理両道を体現したいです>
対話ネットには現在、北海道から東京、南は沖縄まで約五十人が参加する。FBではほぼ毎日、意見が交わされ、ネットの無料通話サービス「スカイプ」を使った討論を定期的に開催。気になった新聞記事の切り抜きなども皆が投稿する。
田中さんは昨年一月と七月、講師を招いて時事問題を考える「北の高校生会議」を開いた。対話ネットはその延長線上にある。
中学で転校し一時、「内向きコミュニティー(集団)」に受け入れられない経験をした。高校生になり、若者向けのセミナーなどに積極的に参加し、学校内外で仲間を増やした。十八歳選挙権では学校で模擬投票など「主権者教育」を進める動きもあるが、「校内の狭いコミュニティーでは限界がある。自分たちで補った方がいい」と考える。
論文では政治学丸山真男の言葉を引いた。「実に優秀な人が全く違った分野にいるでしょう。どうしてこういう人たちが横にもっとつきあい、もっと話をする機会をもたないのかと」
対話ネットの問い合わせは田中さんのメール=magokoro.0709@gmail.com=へ。

小泉信三賞> 慶応義塾の第7代塾長で、皇太子時代の天皇陛下の教育責任者を務めた経済学者、小泉信三(1888〜1966年)の業績を記念し、76年から行われている小論文コンテスト。第40回は、社会的弱者について考える、対話の意義−など5つの課題から1つを選んで論じることが求められた。