国会論戦 野党は臆せず切り込め - 朝日新聞(2016年1月8日)

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夏の参院選での対決を先取りしたのか。衆参両院での代表質問は、与野党党首らによる批判の応酬が目についた。
久しぶりの本格論戦である。前の国会が安全保障関連法制の採決強行で昨年9月に幕を閉じた後、民主など野党5党は憲法53条に基づき、臨時国会の召集を安倍首相に求めてきた。
10月に内閣改造があり、環太平洋経済連携協定(TPP)が大筋合意したことを考えれば、当然の要求である。だが、政権は首相の外遊などを理由にこれを拒み、衆参の予算委員会を1日ずつ開くことなどでお茶を濁してきた。
民主党岡田代表が「首相が国民への説明から逃げ回ってきたことを指摘しなければならない」と真っ先に追及したのはうなずける。
首相は、通常国会の早期召集で「迅速かつ適切に対応している」と強弁。さらに続けて、「ただ反対と声をそろえるだけなら簡単だ。しかし、それぞれの政党が現実を直視し、その解決のための政策提案から逃げ回っているようでは国民の負託に応えられない」と岡田氏を挑発した。
この国会を前に、民主党と維新の党が衆院統一会派を組んだ。参院選に向け、共産党も含めた野党統一候補の動きも出ている。自民・公明の巨大与党に対抗するためだ。
首相はこうした動きも意識しているのだろう。維新の松野代表への答弁でも野党共闘を牽制(けんせい)する一方で、おおさか維新の馬場幹事長には「責任政党とは政策協議を行っていく」と応じてみせた。
野党共闘には野合批判がつきまとう。だが、政権は数を頼みに「違憲法制」すら強行してきた。野党が結束して対抗することは理にかなっている。
首相は年頭の記者会見で、GDP600兆円などの目標を挙げ「通常国会はまさに未来へ挑戦する国会だ」と強調した。
指導者が未来のビジョンを語ることは否定しない。だからといって過去をあっさり水に流すわけにはいかない。安保法制は3月に施行されるが、違憲の疑いが消えたわけではない。憲法に対する政権の姿勢は、引き続き追及されてしかるべきだ。
補正予算に盛り込まれた一部高齢者への3万円の臨時給付金の是非、消費税の軽減税率の財源など、ほかにもきょうからの予算委で論ずべき点は多い。
批判や牽制に臆することなく、野党は問題点に切り込んでいかねばならない。立法府に求められる本来の役割である。