夫婦別姓 こう思う/下 野田聖子・前自民党総務会長 女性活躍に不可欠 - 毎日新聞(2015年12月29日)

http://mainichi.jp/articles/20151229/ddm/005/010/173000c

問われる政権の意欲
−−夫婦が希望すればそれぞれの姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓」の導入を法制審議会が答申したのが1996年。自民党内ではいまだに賛否の議論が続いています。
◆党内の別姓推進派は2002年、反対派にも配慮して、家庭裁判所の許可を得た場合のみ別姓を名乗れる「例外的夫婦別姓」法案をまとめたが、却下された。反対派は旧姓の通称使用は容認すると言うが、そうした方向の法案を自分たちで出したことはなく、どこまで本気なのか疑問だ。自民党憲法改正を掲げた保守政党で、何も変えないのが保守ではない。女性の社会進出が進み、すでに共働き世帯が専業主婦世帯より多くなっている。時代に適応した法律を作らなかったのは立法府の怠慢だ。
−−最高裁は国会の議論を促しました。今後はどう活動しますか。
◆仲間の弁護士らの団体が先月、結婚で姓が変わった場合でも、業務で旧姓を使用できる制度改正案をまとめ、自民党稲田朋美政調会長や関係省庁に要望書として提出した。住民票など公的証明書に通称を併記し、パスポート発行や銀行口座の開設も通称で可能とする案だ。法改正は必要なく、政府の通達のみで実現できる。本丸は民法改正だが、実現するまで待てない。まずはこのボールを党や政府がどう打ち返すかを見極めたい。
−−自民党で長年、議論の結論が出ない原因は何だと思いますか。
◆男性ばかりの自民党で女性の痛みを理解できる人は少なかった。逆に言えば娘しかいない男性議員は当事者意識があり、理解してくれた。反対派は伝統や絆、「子どもが可哀そう」といったキーワードを多用するが、軽率に使い過ぎる。特に絆の定義は人それぞれで、国会議員が軽々しく使う言葉ではない。
−−安倍政権は女性活躍を掲げています。
◆女性に「活躍しろ」と言いながら、男性と互角に戦う女性が割を食っている。彼女たちの言い分を聞いた上での政策でなければ筋は通らず、その意味ではいいタイミングだ。女性が旧姓を使用したくても、弁護士など多くの国家資格が戸籍名での登録を義務づけている。仕事がスムーズにいかないケースも多く、多様性を認めることが不可欠だ。柔軟に対応する意欲があるのかが政権に問われている。
−−11年に一般男性と結婚しました。夫が姓を「野田」に変えたのはどうしてですか。
◆私が野田家を守るため、野田姓のままでいなければならなかった。事実婚でもいいと思っていたが、子どもが非嫡出子になり迷惑がかかるので、相談して決めた。男性でも嫌な思いをした人は少なくなく、夫も「選択的夫婦別姓が実現したら旧姓に戻す」と言っている。【聞き手・田中裕之】
■人物略歴
のだ・せいこ
1993年衆院選で初当選し8期目。98年に当時史上最年少で郵政相として初入閣し、自民党総務会長などを歴任した。約20年にわたり「選択的夫婦別姓」の導入を訴えており、自民党内で「例外的夫婦別姓」法案を作成した中心議員の一人。