共生社会へ 「手話は言語」を法律に - 東京新聞(2015年12月11日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015121102000159.html
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手話を独自の言語と定める「手話言語法」の実現を望む声が、地方から湧き起こっている。手話への無理解は今もある。国は地方の求めに応えて早期に法を制定し、その普及に努めるべきだ。
国内には約三十万人の聴覚言語障害の人々がいるとされる。
全日本ろうあ連盟(東京都新宿区)によれば、彼らの多くは自らを「ろう者」と呼び、その言語の「日本手話」と固有の文化に誇りを持っている。
だが、耳が不自由な人みんなが、手話を自在に使いこなせるわけではない。言語として、周りに十分認知されているわけでもない。
「耳の聴こえない」人々が登場するミステリー小説「デフ・ヴォイス−法廷の手話通訳士」で知られ、ろう者とも親しい作家の丸山正樹さんが、手話を「身内言葉」と独特の用語で表現した。
「身内」の言葉のままでは、本来健常者も交えた交流手段の言語のはずの手話が社会全体にはなかなか届かず、広がりもしない。
そうした苦悩やもどかしさを受け止め、手話を言語として認める全国初の条例をつくったのが鳥取県だ。二〇一三年十月だった。
鳥取県の試みが先駆けとなり、その後二年間に神奈川、群馬両県や、三重県の松阪と伊勢市、埼玉県朝霞市前橋市など計二十四自治体が条例を制定した。
年内には埼玉県富士見市静岡県富士宮市なども仲間入りする見込み。県レベルでは長野県が制定に向け意見公募のさなかだ。
ことさら目を引くのは全国の99・8%を占める千七百八十四の地方議会が、国に対して「手話言語法」の制定を求める意見書を可決していることだ。
意見書に拘束力はないが、地方自治法九九条に定められ、地方が政府や国会に政策反映への希望を物申せる。これだけの後押しは、ろう者には心強いに違いない。
関連の一般向けフォーラムが十二、十三両日、東京都千代田区秋葉原UDXビルで開かれる。
聞こえる子たちが国語を学ぶように、聞こえない子たちが手話を学べる場は、依然遅れている。双方が手話を学べる場を増やしたい。手話通訳士も、まだまだ足りない。
教育など、ろう者の生活の場を広げる環境整備には、条例では及ばない予算化など国の総合的な施策が求められる。法制化は、手話にとどまらず、障害や多様な文化を受け入れる共生社会に歩みを進める支えになるはずだ。