性的少数者 共に生きる存在として - 東京新聞(2015年12月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015120102000142.html
http:/megalodon.jp/2015-1201-1100-35/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015120102000142.html

神奈川県の市議が同性愛者を中傷する投稿をして批判を浴びた。多様な性を認め合える社会を目指すのか。性的少数者(マイノリティー)への差別を禁じる条例づくりも進められる今、考えたい。
問題の投稿は海老名市の七十一歳の男性市議がサイトに掲載。同性愛者について「生物の根底を変える異常動物」と中傷する言葉を書き込んだ。市議は投稿を削除したが、当事者を侮辱し、差別や偏見を助長する表現だ。「軽はずみだった」と本人も認めた。見識ある行動を求められる公人としての資質に欠けている。
性的マイノリティーを語る「LGBT」は、女性同性愛者「レズビアン」、男性同性愛者「ゲイ」、両性愛者「バイセクシュアル」、生来の性別に違和感を持つ「トランスジェンダー」の頭文字をとった言葉。どの性別を恋愛や性愛の対象にするか(性的指向)、本人の性別認識(性自認)は人さまざまだ。
欧米では同性婚の法制化が広がっているが、日本ではLGBTについて十分に理解されているとはいえない。調査研究では国や人種に関係なく人口の5%程度が該当する。国内では今春、全国七万人を対象にしたネット調査で人口の7・6%と推計された。十三人に一人の割合は少なくない。
少なくない当事者が小学生のときには「自分は周り(の友だち)とは違う」と気づいている。しかし多様な性への理解がないために誤解や偏見に遭う。関係が近いほど葛藤も生まれやすいという面もある。親に受け入れられない、教師にも話せない。いじめられた経験や自殺を考えたことがある人の割合が高いという研究もある。命と尊厳にかかわる問題である。
自治体に性的マイノリティーへの差別を禁じ、権利を守っていこうとする動きが広がりつつある。
一昨年、全国初の「LGBT支援宣言」を出した大阪市淀川区は全職員研修を行う。東京都渋谷区と世田谷区は同性パートナーを公に認める制度を始めた。文京区と多摩市も性的指向性自認による差別を条例で禁じる。
行政が性的マイノリティーの存在と権利を認めることで社会を動かす力にもなる。同性パートナーを保険の受取人や家族割引対象と認める企業も現れた。同性カップルに結婚祝いを贈る企業もある。
国の研究では、同性婚の法制化について賛成する人が若い世代では多数になった。性に限らず多様性を認め合い、共に生きる存在として互いを認め合いたい。