一票の不平等 民意を反映する制度に- 東京新聞(2015年11月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015112602000164.html
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最大格差が二・一三倍の衆院選をめぐる最高裁の判断は「違憲状態」だった。立法府裁量権を重くみて、「違憲」と踏み切れなかった。限りなく一票が平等な選挙制度を早く構築せねばならない。
ある法案について、仮に国民の意見の51%が反対で、49%が賛成だとしよう。ところが、国会議員の構成が反対派49%で、賛成派51%ならば、この法案は可決されてしまう。民意を反映した選挙制度でないと、こんな矛盾が起きる。
日本国憲法の前文は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」の文言で始まる。「正当な選挙」こそ、民主主義の根幹といえる。一票の重みに違いがあっては、国会での多数決の結果が国民の多数決と一致しなくなる。
だから、選挙制度は限りなく「一人一票」を目指さなければならない。二倍を超える格差とは「一人〇・五票」しかない有権者がいることを意味する。この不平等を是正することは憲法が要請しているともいえる。
だが、最高裁は「違憲状態」と述べるにとどまった。「〇増五減」という小選挙区の定数是正策に対して、一定の評価をした結果だ。「漸次的な見直しを重ねることも、国会の裁量にかかる現実的な選択として許容される」として、「違憲」にまで至らない状態だと結論づけている。
立法府に甘すぎはしないか。そもそも各都道府県にあらかじめ一議席を割り振る「一人別枠方式」が不平等の根源だと指摘したのは、二〇一一年の最高裁だ。条文上は削除されているものの、「〇増五減」は同方式を実質的に温存した、目をくらます手法である。司法が消極姿勢ではいけない。
選挙制度をめぐっては、有識者会議が改革案を検討中だが、現行制度の根本まで深めた抜本策が議論されているとはいえまい。
例えば、昨年の衆院選では、自民党小選挙区で48%の得票率で75%もの議席を獲得した。こんな現象を生むのは、現行の小選挙区比例代表並立制の問題でもある。選挙制度が民意と乖離(かいり)していないか。少なくとも「勝者総取り」とでもいうべき“マジック”が働いている。現行制度のままでいいのか、根源的な問い掛けが必要である。
今回の判決では三人の最高裁判事が反対意見を書いた。「違憲・選挙無効」とした弁護士出身の判事もいる。「正当な選挙」が疑われると、国会の正統性さえ崩れる。