(筆洗)そのロケットは「物理的な力だけで飛んだわけではない」 - 東京新聞(2015年11月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015112502000153.html
http://megalodon.jp/2015-1126-1105-19/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015112502000153.html

そのロケットは「物理的な力だけで飛んだわけではない」とNASAの元エンジニアが書いている。ロケットはニュートンの第三法則「作用と反作用」という物理的力によって、飛翔するのだが、それだけでは足らぬという。
そのロケットとは元エンジニアが少年時代に仲間たちと作ったロケットである。一九五七年、米ウェストバージニア州の炭鉱町。世界初の人工衛星スプートニクに驚いた少年たちは自分たちもロケットを飛ばそうと計画する。失敗の連続だったのだが、ある日、打ち上げに成功した。「物理的な力」以外の力が加わったという。
元エンジニア、ホーマー・ヒッカム・ジュニアさんが書いた『ロケットボーイズ』。映画「遠い空の向こうに」の原作である。
さてこっちのロケットも打ち上げに成功したようでホッとする。H2Aロケット29号機である。
もはや打ち上げが珍しくない時代とはいえ、大空に昇っていくロケットを見ていると、自然と力が入る。「行け」と小さく声を出す方もいる。成否には、日本の打ち上げビジネスの未来がかかっていたが、それ以前に、ロケットに携わった大勢の方々の夢や努力を想像し、素直に成功を祈りたくなるものだ。
さて元エンジニアの言う「物理以外の力」とは何だったか。「人々の応援、それに少年たちが描いた夢」とある。ロケットには人の思いが欠かせぬらしい。