子どもの貧困、減らすために最も必要なものとは? - 朝日新聞(2015年11月22日)

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■大阪子どもの貧困アクショングループ(CPAO)代表・徳丸ゆき子さん
おととし設立したCPAO(シーパオ)では昨年にかけ、大阪のシングルマザー100人に聞き取り調査をしました。様々な事情でしんどい状況におかれている母親を見つけ、支援につなげる。親子まるごとサポートしないと子どもは救えません。
生い立ちを聞くと、困窮している多くの母親は、自分が子どものころから暴力や貧困と隣り合わせにいました。家にいられず、寂しくて結婚して、パートナーから暴力を受けるケースも多い。働きづめで子どもと向き合う時間が限られてしまう。子どもはストレスを抱え、いじめや非行といった問題を抱えていく。そんなケースが少なからずあります。
調査でこんな声を聞きました。ある女性は子どものころ、寒い日にせっかんされて外で震えていたら、近所のおばちゃんが「おいで」といってお風呂にいれて、ご飯を食べさせてくれたことが忘れられない。ある人は、おばあちゃんの家で寝たとき、布団の中で足をそっと挟んでくれたのがあったかかった。そのぬくもりを忘れないから、切羽詰まっても踏みとどまることができたと。
子ども時代はとても大切です。人のあたたかさに触れた体験が、人を信じさせるのだと調査からわかりました。人や社会を信じているから、SOSが出せる。
「助けて」って言ってもええねんで――。しんどい状況におかれている人たちに、このメッセージを届けたい。多くの親は、子どもを自分だけで育てるしかないと孤立しています。助けを求めてほしい。「世の中捨てたもんじゃない」と伝えたい。
そういった人とつながるツールの一つが、一緒にご飯を食べること。大阪市生野区助産院を改装した場所で、ご飯会を週3回開いています。ご飯を食べながら話すとぐっと近づくし、元気が出ますよね。多いときは親子40人が集まります。ひとと出会い、つながっていける場であってほしい。
そこで子どもたちに「何がしたい?」って聞くんです。釣りという子がいたら、釣り好きな大人が連れていきます。写真が撮りたいという子がいたので、カメラクラブを作りました。1人ではできなくても仲間がいればかなう。それが、生きる希望につながればと考えています。
私も10歳の息子を育てるシングルマザーです。「男の子のことってわからない」とぼやいたら、知人の男性が「月一父さん」をやってあげるよと。連れ出して思い切り遊んでくれるんです。顔の見える支え合いですね。月2時間でもいい。月一おばさんでも、月一お兄さんでも、始められるのではないでしょうか。
「子どものために何かしたいのですが」とよく聞かれます。子どもの貧困は待ったなしです。様々な枠を超え、何とかするしかありません。国が責任を果たすことを長期的視野に入れながら、親と支え合い、子どもを共に育てるコミュニティーをつくっていきたいと考えています。(聞き手・河合真美江)
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とくまる・ゆきこ 70年、大阪市生まれ。NPO法人などで不登校や引きこもり、貧困などの子どもの支援に携わってきた。