教育紙芝居の変遷追う 下町の娯楽から戦意高揚の道具へ:東京 - 東京新聞(2015年10月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201510/CK2015103002000170.html
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下町の子どもたちの娯楽から始まり、戦中は国策宣伝に利用された教育紙芝居の変遷をたどる企画展「教育紙芝居の誕生」が、すみだ郷土文化資料館(墨田区向島2)で開かれている。担当した学芸員は、紙芝居の移り変わりに「日常が戦争に侵食され、壊れていく様子を感じてほしい」と話している。 (酒井翔平)
教育紙芝居は、墨田区の教育家、今井よねさん(一八九七〜一九六八年)が、一九三三(昭和八)年ごろに生み出したとされる。キリスト教徒である今井さんは聖書を題材にした物語を作り、主宰する日曜教室や街頭で披露してきた。三八年には日本教育紙芝居協会が創立し、物語の種類を増やしながら広まった。
太平洋戦争が始まると、子どもたちへの人気の高さに目を付けた政府の命令で、戦意をかき立てる道具として利用される。節約の大切さを説いたり、国に尽くすことを呼び掛けたりする内容に一変した。大人向けの紙芝居も作成され、軍需工場などでも演じられた。
会場には、日本で初めて印刷出版された「聖書物語1 少年ダビデ」や戦時下における庶民の心構えを落語風に訴えた「滅私奉公」など貴重な教育紙芝居や子どもに紙芝居を演じる今井さんの写真など約百点が並ぶ。資料館によると、今井さんは戦後は、教育紙芝居のことを人に話さなくなり、制作もやめた。
学芸員の高塚明恵さんは「自分が生み出したものを利用された負い目があったのでは」と推測した。
十二月十三日まで(一部の展示品は十一月二十九日まで)。入場料は、大人百円、中学生以下は無料。午前九時〜午後五時で、毎週月曜日と第四火曜日は休館

展示概要
すみだの地で教育的な紙芝居を創始した今井よねの取り組みを中心に、戦前・戦中の教育紙芝居のあゆみを取り上げ、墨田区と紙芝居の関わりについて紹介します。
開催期間
平成27年10月10日(土曜日)から12月13日(日曜日)まで
展示の詳細(チラシ)
http://www.city.sumida.lg.jp/sisetu_info/siryou/kyoudobunka/info/kamishibai.files/kamishibai.pdf