これからどうなる安保法 (10)立憲主義の行方 - 東京新聞(2015年10月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015101602000137.html
http://megalodon.jp/2015-1016-0913-17/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015101602000137.html

他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を中心とする安全保障関連法について、多数の憲法学者が「憲法九条の許容範囲を超えている」などとして違憲と指摘。歴代の内閣法制局長官の多くや山口繁元最高裁判所長官らも違憲とした。だが、安倍政権は与党の「数の力」で成立させた。
法律が憲法違反かどうか最終的に判断するのは最高裁判所。しかし、判決を得るのは簡単ではない。日本には、条文自体が違憲かを判断できる憲法裁判所がないからだ。訴える側が具体的な問題で不利益を受けたという主張がなければ、訴訟は受け付けられない。
最高裁が「高度な政治性がある」とみなせば、「統治行為論」と呼ばれる考え方で、判断を避ける場合もある。米軍駐留の是非が問われた最高裁砂川事件判決では「一見極めて明白に違憲無効」でない限り、判断しないとした。
だが、集団的自衛権は日本が攻撃されていないのに他国を武力で守る。日本が攻撃された場合に国民を守る自衛隊駐留米軍と違い「一見極めて明白に違憲」との指摘は少なくない。
実際に自衛隊を運用すれば、違憲性がより明確になる可能性がある。中東・ホルムズ海峡で集団的自衛権行使に当たる戦時の機雷掃海を行えば、違憲訴訟が起きることが予想される。
安保法には、他国軍支援の強化、国連平和維持活動(PKO)での武器使用拡大、平時の米艦防護なども盛り込まれた。PKOの任務拡大では、駆け付け警護に当たる自衛隊が反政府勢力との戦闘になれば、海外での武力行使に当たるとの批判が出る可能性がある。他国軍支援の強化では、戦闘現場により近い場所で支援した場合、他国軍の武力行使と一体化しているとみなされれば違憲となる。
しかし、裁判は時間がかかる。裁判の有無、勝敗にかかわらず、政府が憲法に抵触するような活動を自衛隊にさせれば、国民の批判が高まり、政権基盤が揺らぐ。来年夏には参院選がある。政権に憲法に反する判断をさせず、立憲主義を守れるかどうかは、最後は国民の監視と世論にかかっている。 (金杉貴雄)