これからどうなる安保法 (8)他国軍への支援 - 東京新聞(2015年10月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015100902000136.html
http://megalodon.jp/2015-1009-0909-40/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015100902000136.html

安全保障関連法で、集団的自衛権の行使と並んで国会審議の焦点になった自衛隊の任務拡大が、米軍など他国軍の戦闘に対する支援だ。安保法成立で、より「戦場」に近い場所で軍事色の強い活動ができるようになる。
関係する法律は二つ。日本周辺有事などに対応する周辺事態法を改正した重要影響事態法。もう一つは日本の安全と直接関係ない事態に対応する国際平和支援法。これまでは期間と目的を絞った特別措置法を成立させて派遣してきた。テロ特措法で海上自衛隊がインド洋で行った給油活動などが当てはまる。
いずれも自衛隊が活動する地域は拡大する。これまでは「他国の武力行使との一体化」を避けるため「活動期間を通じ戦闘行為が行われる見込みがない地域」を「非戦闘地域」と位置付け。情勢の変化で戦闘が行われる可能性のある地域には入らず、非戦闘地域で給油や輸送を行った。
二つの法律では非戦闘地域の考え方をなくし、情勢の変化により戦闘が行われる可能性があると判断した地域でも活動する。安倍晋三首相は「例えば自衛隊が二週間活動するなら、その期間は戦闘現場にならないと判断する方が、より現実的だ」と強調した。
だが、戦闘現場かどうかの政府判断はこれまでの法律でも疑わしかった。イラク戦争時のイラク復興支援特措法で、航空自衛隊は戦闘が続いていたバグダッドにある空港への輸送活動を行った。「非戦闘地域」の縛りさえなくしてしまった安保法では、限りなく戦闘状態に近い地域で活動を行う恐れがある。
周辺事態法は支援を公海上にとどめると定めていたが、重要影響事態法は他国の領域でも相手国の同意があれば可能。国際平和支援法は特措法でないので、国会の事前承認を得ればいつでも、地球上のどこへでも自衛隊を派遣できる。
任務の内容では、他国軍への弾薬提供や発進準備中の航空機への給油も可能になった。これらは、敵国の攻撃対象となって隊員が死傷する危険も高まる。
平和憲法の下、直接の戦闘ではない支援であっても慎重に対応し、武力による紛争解決と極力距離を置いてきた日本の政策が大きく変質する。 (中根政人)