(天声人語)憲法違反だ、立憲主義に反する――。 - 朝日新聞(2015年9月30日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S11990285.html?ref=tenseijingo_backnumber
http://megalodon.jp/2015-0930-0913-58/www.asahi.com/paper/column.html?iref=comtop_pickup_p

憲法違反だ、立憲主義に反する――。専門家から、路上から湧き起こった声は、届かなかった。採決強行で安保関連法が成立した9月の言葉から。
山口繁・元最高裁長官(82)も、この立法を「違憲」と断じた。集団的自衛権の行使は許されないと結論する72年の政府見解を、安倍政権が今回、許される根拠に使ったのを痛烈に批判。「『憲法上許されない』と『許される』。こんなプラスとマイナスが両方成り立てば、憲法解釈とは言えない」
大岡昇平の凄惨(せいさん)な戦争文学『野火』を映画化した塚本晋也さん(55)は、「平和安全」をことさらに強調する政権の論法を疑う。国会論議にも、「戦争の現場で痛い目にあった人たちの存在は忘れさられているとしか思えません」
審議を傍聴し続けた東京都国立市の西川重則さん(88)は兄を戦争で失った。主権者として何をするか。「悪法が生まれる過程を見つめることが使命だと思っている」
政治の「虚と実」をどう見極めるか。片山杜秀(もりひで)慶応大教授(52)は「政治には、夢みたいに思える理想を『必ず実現する』と説くことで、人気を集める技という面があります」。安保法が成立するやいなや、政権は再び「経済最優先」へ。アベノミクスの虚実はいかに。
小泉純一郎元首相(73)が、退任後初のインタビューに応じた。「原発は環境汚染産業なんです」と持論を強調。「国民は『今のままでは済まない時代がいずれ来る』とわかってますよ」。それは原発に限ったことではないだろう。