(筆洗)学校の宿題をやり忘れた時、どんな言い訳をするか。「宿題はやったのですが、家に置いてきてしまった」 - 東京新聞(2015年9月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015091702000136.html
http://megalodon.jp/2015-0917-1033-46/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015091702000136.html

学校の宿題をやり忘れた時、どんな言い訳をするか。「宿題はやったのですが、家に置いてきてしまった」。同級生が口にするのを聞いたし、自分でも使った。もちろん、「家に帰って取って来なさい」と言われてしまえば、事態はさらに悪化する。
米国の子どもの言い訳はもっと大胆で、愉快でもある。「犬が宿題を食べちゃった」(THE DOG ATE MY HOMEWORK)。宿題を忘れた時の常套句(じょうとうく)だそうだ。
飼い犬に濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を着せる言い訳は一説によれば、二十世紀初頭には存在したそうだから、歴史と伝統がある。今、実際に教室で使う子はいないだろうが、「あきれた言い訳」「信じられぬ言い訳」の代名詞として使われる。
二〇一五年の「犬が宿題を食べちゃった」賞の有力候補であろう。「法案が成立し、時間が経ていく中で間違いなく、(国民の)理解は広がっていく」。安倍首相の安保関連法案に関する「言い訳」である。
首相の宿題でもあった国民の理解はいっかな増えぬ。それでも成立を急ぎたいと「きっと、いつかは分かってくれる」とは、あの宿題を食べた犬もしっぽを巻く。この弁でいけば、あらゆる法案審議に国民の理解は無用である。成立さえすれば「理解は広がる」
政府・与党は成立を急ぐ。もちろん、やっていない宿題を「帰って取って来なさい」と叱られたくないからである。