無戸籍の人 埋もれた存在の人にするな - 毎日新聞(2015年8月28日)

http://mainichi.jp/opinion/news/20150828k0000m070142000c.html
http://megalodon.jp/2015-0828-1027-03/mainichi.jp/opinion/news/20150828k0000m070142000c.html

法の壁だけではない。貧困もこの問題の背景には横たわる。
ある30代の女性は、両親が産婦人科に出産費用を払えず、出生証明書がもらえずに無戸籍になったという。両親が役所に相談しても高圧的な対応をされ、小学校や中学校にも通わなかった。
文部科学省が調べたところ、全国142人の無戸籍の小中学生のうち約3分の1が就学援助を受ける経済困窮の家庭だった。未就学期間が7年半に及ぶ子供の存在も明らかになった。そうした子供はまだ埋もれているのではないか。そんな懸念を抱かざるを得ない。
住民の生活と密接に関わる自治体の役割は大きい。無戸籍者に対して柔軟に住民票を作成するなど公的サービスの提供と救済に尽くしてほしい。教育や厚生など関係部門の連携を強め、子供をはじめとした無戸籍の人の掘り起こしも進めるべきだ。
住民票のある人を共通番号で管理するマイナンバー制度が始まっても、無戸籍の人ははじかれる可能性がある。納税、年金など国民生活の重要事項が対象になるだけに心配だ。政府、自治体はこの問題の解決を最優先課題と位置づけてほしい。