命の大切さ 園児にも 宇都宮の保育園が「平和月間」:栃木 - 東京新聞(2015年8月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150828/CK2015082802000166.html
http://megalodon.jp/2015-0828-1024-45/www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20150828/CK2015082802000166.html

宇都宮市長岡町のありんこ保育園が、八月を「平和月間」と独自に定め、園児たちに平和の尊さを知ってもらう取り組みを続けている。十六年目を迎えた今年も二十六日、保育士たちが演劇を披露し、戦争の悲劇を繰り返さないというメッセージを伝えた。「命を大切にしようという意識が、子どもたちにつながっていけば」。大人たちの純粋な願いは、一人一人の胸に刻み込まれている。(後藤慎一)
今年のメーンとなる催しは、女性の保育士六人によるミュージカル演劇「ぞうれっしゃがやってきた」。名古屋市の東山動物園を舞台に、戦時下の動物たちの苦難を描いた実話。戦況の悪化を受け、トラやライオンが銃などで殺されるシーンになると、「二度と撃つな」と演技に見入って叫ぶ子もいた。
「平和月間」を設けたのは二〇〇〇年。市内で八月に開かれた平和コンサートへの出演を依頼され、保育士と園児たちが一緒に参加する機会があった。その過程で「子どもたちと平和を考えていこう」と機運が高まり、保育士から園児に平和への思いをつなげる取り組みに発展した。
園児数はゼロ〜五歳児の計八十人。月間中は毎日、昼寝の時間の前に絵本を読み聞かせている。「かわいそうなぞう」「まっ黒なおべんとう」など、戦争や命をテーマにした作品から、地元にちなんだ「宇都宮大空襲」という作品も扱う。絵本は約四十冊あり、保護者にも貸し出している。
一年目から携わり、現在は園長を務める冨田奈穂子さん(40)は「子どもたちの未来のために、平和を引き継いでいくのが大人たちの役割。保育士たちが戦争のことを伝えるということを意識するためにも、月間を設けている」と、取り組みへの思いを強調する。
「戦争は起こしちゃいけないね」「僕たちはけんかをしても話し合いをして仲直りするのに、なぜ戦争は起きるの」。園児たちは、純粋な思いを投げかけてくる。女性保育士は平和月間の意義を感じ、「子どもたちが戦争について考えてくれるのがうれしい」と話している。