全国学力テスト 入試利用は競争あおる - 東京新聞(2015年8月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015082702000121.html
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点取り競争をあおることにならないか。大阪府教育委員会文部科学省の反対を押し切り、来春から全国学力テストの結果を高校入試に利用するというのだ。他の自治体に飛び火しかねず、心配だ。
文科省の学力テストは毎年、原則すべての小学六年生と中学三年生が参加して行われる。今年は国語、算数・数学のほか、理科が三年ぶりに加わった。学力傾向を把握し、授業や指導の改善に生かすのがねらいだ。
しかし、大阪府の動きは大きく逸脱している。学校の序列化や過剰な競争を招くおそれが強い。
大阪府の方針では、府立高校の入試に向けて中学三年生の内申点をつけるときの基準に、学校ごとの学力テストの校内平均を反映させる仕組みにする。テストの平均正答率が高い学校では、内申点も高くできるという。
学校間の学力差の補正に利用することで、公平な選抜が期待できるという理屈である。
とはいえ、やはり乱暴だ。今テストは三教科なのに、内申点評価は社会や英語、音楽などをふくめて九教科に及ぶ。それに実力にかかわらず、在籍する学校によって有利にも、不利にもなりうる。
懸念を示していた文科省も、現場の混乱を避けるためとして、来春の入試に限って認めることにした。だが、大阪府はあくまで入試制度として定着させる構えだ。
大阪府の中学数学の都道府県別順位は、基礎力を問うA問題が昨年の四十二位から二十一位、応用力をみるB問題は四十位から二十位に上がった。早くも学校の授業がテスト対策に傾いていないか。
一九六〇年代に打ち切られた旧学力テストの歴史を思い出そう。
子どもの成績に応じて先生の勤務評価が左右された面もあり、激しい点取り競争を招いた。知的障害のある子を休ませる、先生が答えをほのめかすといった不正も横行し、子どもの人格形成がないがしろにされていると批判された。
二〇〇七年に現行の学力テストが復活してからも、成績の取り扱いをめぐり度々問題が持ち上がる。
かつての失敗を繰り返さないよう、文科省は市町村別や学校別の成績公表を禁じていた。ところが、情報開示や説明責任を理由にルール破りの自治体が相次ぐと追認に転じた。それで大阪府を翻意させられるのか。
毎年かつ全員参加方式は見直すべきだ。もはや一点刻みの競争教育の時代ではない。子どもの人格に目を向けた教育力を磨きたい。