経済界、なぜ集団的自衛権を支持? 寺島実郎さんに聞く - 朝日新聞(2015年8月14日)

http://www.asahi.com/articles/ASH7046XTH70ULFA01C.html
http://megalodon.jp/2015-0814-1206-19/www.asahi.com/articles/ASH7046XTH70ULFA01C.html

――国際貢献日米安保の維持には、集団的自衛権が必要ですか。
集団的自衛権は、西側陣営の一翼として団結して向き合おうという冷戦時代の論理だ。日本は米軍基地の経費の7割も負担しているため、本来であれば、現状の役割はストレスを感じる中身ではない。だが、日本人には戦後ずっと米国に守られて豊かになったというコンプレックスがある。それが日本も世界の平和に貢献しないといけないとの論理に発展し、集団的自衛権の行使容認への意識にもつながった。
米国の防衛官僚からすれば、7割も経費負担してもらえる在日米軍は本土よりコストが安く、なるべく長く置いておきたい。日本が集団的自衛権は無理、せめて基地の負担だけは続けると落ち着けばそれでよかった。しかし、日本が集団的自衛権の行使容認に踏み込んだため、ワシントンでの議論も変わってきた。
米中関係をみるといい。双方にとっては、今は米中戦争を避けることが最大の重要課題だ。昔は日本が米国の戦争に巻き込まれるのを恐れたが、今は米国が日中紛争に巻き込まれるのを避けている。日本を見捨てる気もないが、中国と戦う気もない。双方を大事にして影響力を保つ戦略で、経済人にはその変節に気づいている人もいる。

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――力で対抗することが損か得かは考えないのか。
損得の検討が次第によぎるから、経済界には奇妙な「沈黙」が起きている。建前では安倍政権を支持するが、腹の底では中国を考える。どう折り合いをつけていいか分からないから黙っている。本来は、一歩先の世界認識を示すのが経済界の役割だと思うが。

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――在日米軍を縮小させると、そのあとには重武装化が待っていませんか。
中国で講演すると、必ずその質問が出てくる。日米安保は中国にプレッシャーを与えると同時に、日本の軍国主義を抑える「瓶のふた」の役割もはたすと考えられるからだ。瓶のふたがとれたら、日本はまた軍国主義の誘惑にかられ、血が騒ぐのではないかとの警戒がある。こういう二重構造を理解することが大事だ。アジアにとって軍事的な脅威にならないためにも、中国への対抗心から国の進路を決めるのではなく、大きな世界観を持って賢い行動をとらないといけない。