「学生を二度と戦地に送らぬ」 立教大に戻った日章旗に誓う - 東京新聞(2015年8月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015081402000123.html
http://megalodon.jp/2015-0814-0928-48/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015081402000123.html


太平洋戦争で戦死した学生が身に着けていた日章旗が、立教大(東京都豊島区)の展示館に飾られている。戦地で米兵に持ち去られた旗を遺族に返還しようと奔走した立教大文学部の西原廉太教授(52)は「この旗は、大切な学生を二度と戦地に送らせないための決意の証し」と話し、国会で審議中の安全保障関連法案への反対を呼び掛けている。 (土門哲雄)
西原教授が日章旗の存在を知ったのは二〇一〇年五月。米国の牧師から「日本の家族に返したい」とメールで相談を受けた。牧師は自宅の隣に住む米軍元軍曹の遺族から旗を譲り受け、持ち主を探していた。旗は元軍曹の部下が銃撃戦で倒した日本兵の軍服のポケットから抜き取ったもので、「立教魂」「立大剣道部」などと書かれていた。
牧師は西原教授と面識はなかったが、立教大が加盟する世界聖公会大学連合会のサイトで西原教授のアドレスを知り連絡した。
すぐに大学挙げての調査が始まった。寄せ書きにあった友人や家族の名前から、旗の持ち主は一九四三年に学徒出陣し、フィリピン・セブ島で戦死した経済学部の渡辺太平さん=享年(21)=と分かった。渡辺さんの姉・文子さん=享年(89)=は亡くなっていたが、渡辺さんのめいの横尾とし子さん(63)=練馬区=に知らせることができ、日章旗は母校の立教大に寄贈された。
それから五年。西原教授は今年七月、戦争参加への危険性が指摘される安保法案の衆院採決に強い危機感を持った。「渡辺さんの日章旗にかかわった者として、反対の声を上げなくてはいけない。それが学生を戦地に送り出してしまった大学としての責任ではないか」と考えるようになった。
周りに呼び掛け、教職員や学生、卒業生の有志で「安全保障関連法案に反対する立教人の会」を発足。共同代表の一人になった。七月三十一日、立教大のチャペルで開かれた設立集会では、横尾さんとともに、日章旗返還の経緯や平和への願いを語った。会の呼び掛け人・賛同者は八月十三日現在、合わせて千人を超えた。
西原教授は「夢や希望を持ち、家族に愛された日米の青年たちが、意図せずに向かい合わざるを得なかったのが戦争。『戦争ができる国』へと道を開く安保法案は明らかに憲法に違反しており、直ちに廃案にするべきだ」と訴える。
横尾さんも「叔父は、もう二度と戦争で命を落とす若者を出さないでほしいと強く願っているはず。戦争で犠牲者を出す可能性が0・01%でもあるのなら、絶対に避けなければいけないと思う。多くの声に耳を傾けようとしない昨今の国会の流れには危険性を感じている」と苦言する。
◆企画展「戦時下、立教の日々」来月4日まで
渡辺太平さんの日章旗は、立教学院展示館で常設展示されている。展示館は、豊島区西池袋3の池袋キャンパス内。夏期休暇中は午前10時〜午後5時開館。土日曜と祝日休館。お盆休みの休館は8月18日まで。一般開放しており、入場無料。
9月4日まで企画展「戦時下、立教の日々」も開催しており、学徒出陣の記録や関連資料も多数展示している。この企画展は10月1日〜12月8日も開催する。問い合わせは展示館事務室=電話03(3985)4841=へ。