従軍記原作 舞台「南の島に雪が降る」 極限の生 支えた演芸 - 東京新聞(2015年7月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2015073002000135.html
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歌舞伎俳優を経て映画、テレビで活躍した昭和の名優加東大介(本名・加藤徳之助)の従軍体験記「南の島に雪が降る」を原作にした舞台が東京で八月、三つの劇団などによってほぼ同時に上演される。戦闘シーンはなく、西部ニューギニア・マノクワリで加東が中心になって組織した演芸分隊の奮闘記だ。飢えや病、前線という緊張状態の中、発揮された演芸や芝居の力が描かれる。 (深井道雄)
浅草公会堂で六〜九日に上演される舞台は、名古屋・中日劇場が制作。落語家の柳家花緑を主人公の加東軍曹役に据え、元宝塚宙組男役トップスターの大和悠河(やまとゆうが)が、加東の妻京町みち代と、現地に住むオランダ人宣教師の娘リリィの二役で登場する。他に川崎麻世、松村雄基、佐藤正宏柄本時生酒井敏也ら。
歌あり踊りあり、笑える絶妙なやりとりが随所に盛り込まれている。脚本・演出の中島淳彦(あつひこ)さんは大和の起用について、「ユーモアと感動を大切に、戦地で出会ったリリィの向こうに祖国日本が見えてくる。そんな存在にしようとお願いした」と話す。
前進座は、七〜十七日に東京・三越劇場で、十八日には武蔵野市民文化会館で初めて上演する。前進座の俳優である加東は大阪で舞台に出演中、召集令状を受ける。脚本を文学座の瀬戸口郁(かおる)さん、演出を同劇団の西川信広さんに依頼。加東の遠縁の前進座座員嵐芳三郎(よしさぶろう)が、加東を演じる。
原作で加東は「勝っても負けても百年戦争」と希望のない兵士の心情を書く。日本兵の多くが熱帯特有の感染症や飢えで命を落としたことを重く受け止める瀬戸口さんは、「必死の生を貫いた男たちの心意気のドラマ」と話す。出演者は減量に励んで舞台に臨む。
劇団アルファーは東京・池袋のシアターグリーンで十二〜十六日に上演。前身の劇団あすなろ時代の一九八〇年から、全国の中学高校を中心に千回以上公演している。今回は十二年ぶりで、加東役を大衆演劇から市川富美雄、演芸分隊の歌手及川役に演歌の北川大介を起用。脚本の西田了さんは「演芸分隊員各人の人間としての面白さ、排他的、利己的になった兵士たちが、どう人間性を取り戻したのか。いつの時代の課題にも通じる」。演出のすやとしのりさんは「百人で満員の小劇場で、俳優たちの息遣いが伝わる舞台にしたい」と話している。
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各公演の問い合わせ先などは次の通り。
★浅草公会堂
 八千五百円など。ジェイ・クリップ(電)=03・3352・1616(平日10時〜19時)
三越劇場武蔵野市民文化会館
 六千八百円など。前進座チケット(電)=0422・49・0300(9時半〜18時)
シアターグリーン
 五千五百円。劇団アルファー(電)=0422・71・7730