(天声人語)また一つ、実績が積み上がった。地域のことは住民が最終的に決めるという実績である。 - 朝日新聞(2015年8月4日)

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また一つ、実績が積み上がった。地域のことは住民が最終的に決めるという実績である。茨城県つくば市で一昨日、住民投票があった。総額305億円の総合運動公園計画への賛否が問われ、反対が8割を占めた。市長は白紙撤回する方針だという。
計画にある陸上競技場は大きすぎる。市長は経済効果をうたうが、根拠に乏しい。将来の世代に大きな借金を残すことにもなる。こう考えた市民の会が署名を集め、住民投票の実施を求めた。代表制を補完する直接民主主義の回路がボトムアップで実現した事例だ。
結果を受けた市民の会の声明が投票の意義を的確に語る。税金の使われ方について「市民自身が決定に直接参画した」。そして「市民一人ひとりがまちづくりに参加する体験を積んだ」。まさに自治は民主主義の学校だ。
市民の会の共同代表を務める永井悦子さんは、「何もしなかったらスルスルッと進んでいたと思う」と話す。間接民主主義が軸だとしても完全ではない。市長や市議会に足らざる点があれば、市民の出番に違いない。
同様の例が各地で続く。愛知県新城(しんしろ)市では5月、新市庁舎の規模を問う投票があり、市の計画に縮小を迫った。埼玉県所沢市の2月の投票で問われたのは、自衛隊基地に近い小中学校へのエアコン設置だった。
いずれも、大阪都構想のように首長が主導するトップダウン型の投票ではない。身近な税金の使い道は最後は自分たちで決め、責任も負う。民主主義の裾野は確実に広がっている。