週のはじめに考える 耳傾けぬ政治家よ - 東京新聞(2015年7月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015072602000163.html
http://megalodon.jp/2015-0727-0903-01/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015072602000163.html

最近、政治家が聞く耳をもたなくなった、とよく聞きます。つまり昔は聞いていたようだ。聞く耳なくしては、国民の声が政治に届くはずもありません。
政治家が聞く耳をもたなくなった、と話した一人は先輩の元政治部記者でした。
質問しました。
「では、聞く耳をもった政治家はいたのでしょうか」
◆大平、宮沢、橋龍さん
「首相でいうと、大平正芳宮沢喜一さんはよく聞いた方だったね。橋龍橋本龍太郎)さんなんかは何度も沖縄を訪ねて話を聞いていたし、首相じゃないが梶山静六さんもそうだった。聞かなかったのは佐藤栄作さん、かな」
◆新聞は帰ってください
先輩記者に聞く耳をもたなかったと名指しされた佐藤栄作氏はテレビカメラだけが回る記者会見で知られます。
官邸で行われた引退会見で「テレビカメラはどこにいる。新聞記者の諸君とは話さないことにしている。国民に直接話したいんだ。文字になるとちがうから偏向新聞は大嫌いだ。帰ってください」と興奮気味に述べた。応じて記者たちは出て行ってしまった。
◆世論という声なき声
六〇年安保の時、国会に押し寄せたデモ隊に対し、岸信介首相は「認識の違いかもしれないが、私は声なき声に耳を傾けなければならない」と述べました。米ソの対立、自社対決、思想対立の時代であり、国論は割れ、デモがあり、声なき声もあったのです。
今はどうか。政府の安保法案には、デモも声なき声も反対しているのではないでしょうか。保守系議員が多いはずの地方議会でも慎重さを求める決議が次々なされています。
国会よ、国民に耳傾けよ。
信頼できる政治を国民は求める。国民の声を聞くのは政治本来の仕事であるはずです。
安保法案の参院審議が始まります。声は届かねばなりません。