離別の子と「ウェブ面会」 ハーグ条約加盟国で初 - 東京新聞(2015年7月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015072702000120.html
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政府は、国際結婚が破綻した後の子どもの扱いを定めたハーグ条約に基づく親子の面会交流支援で、インターネットを通じてパソコンやスマートフォンで画面を見ながら会話できる「ウェブ面会」の導入を決めた。
実際に会うより金銭面や精神面での負担が少なく、面会の機会を増やせると判断した。システム構築を六月に終え、秋から運用を始める。政府関係者が二十六日、明らかにした。
外務省によると、今年七月現在で九十三カ国ある条約加盟国では初の試み。各国に紹介して普及を図る方針で、既に米国やオーストラリアが関心を示している。条約をめぐる相談や要請で、面会交流に関する案件が最も多い実態を踏まえた。
ウェブ面会は既存の映像通信アプリを使うためコストが安く、子どもや家族の心理的負担も少ないとされる。外務省が指定する社会福祉の専門家が会話を外部でモニタリング。親が「こちらの国に戻ってきなさい」と圧力をかけるような発言をした場合は警告したり、回線を遮断したりする仕組みも取り入れる。
親は、日本が条約に加盟した昨年四月以前に連れ去られた子どもについても、面会交流支援を政府に申請できる。外務省によると、支援申請は今年七月時点で「返還」が五十三件に対し「面会交流」は八十七件と多かった。
異なる国に住む親子の面会交流は、遠距離である点に加え、子どもを育てる側の親が接触を望まないケースがあり、ハードルが高い。

ハーグ条約 正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」。国際結婚の破綻による離婚件数に比例し、一方の親が国境を越えて子どもを連れ去るケースが増加。子どもが不利益を受けないよう国際ルールを定めた。1983年に発効した。現在は日本を含めて93カ国が加盟。加盟国には不法に連れ去られた子どもの返還や親子の面会交流の支援が義務付けられる。外務省が「中央当局」として援助申請を受け付け、自治体などと協力して子どもを捜し出し円満解決を図る。