反安保 大学にも拡大 「憲法を無力化」「今声上げねば」 - 東京新聞(2015年7月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015071502000125.html
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安全保障関連法案に反対する動きが各地の大学に広がっている。「民意や立憲主義に反し、戦争につながる」と教員有志が危機感を募らせ、緊急声明や集会を重ねている。十四日は市民団体や学者グループによる声明も相次いだほか、実戦となる恐れもあったイラクへの自衛隊派遣の検証を求める声も上がった。 (安藤恭子竹島勇、小松田健一)
十四日昼、東京都港区の明治学院大の教室で「声明を語る会」が開かれ、教職員と学生ら計二十人が集まった。教員有志十五人は六日、「憲法の平和主義が無力化される」と法案への反対声明を発表。学内に掲示し、百七十人超の賛同人を集めている。
「語る会」はこの日を含め四回開催。昼休みにランチを食べながら、日本の戦後責任や九条、言論への圧力といった問題をテーマに挙げた。今後も続ける予定で、呼び掛け人の猪瀬浩平准教授(文化人類学)は「法案は多様な問題を含む。開かれた対話の場としての大学の役割を果たせれば」と語る。
国会審議が本格化した六月から、法案に反対する大学有志の声明が出始め、東京大でも今月十日、学生や教職員、OBらによる抗議集会に三百人が集まった。
国際基督教大の稲(いな)正樹客員教授憲法)は十三日、政治学、国際関係学の異分野の三人で声明を発表。「法の支配の根本が覆される事態。今声を上げなくては、研究を続けてきた意味がない」と危機感を募らせる。
立命館大の法学部と法科大学院の教員有志六十四人も同日、「戦争準備法の性格を持つ」と法案に反対する声明を発表。他学部の教員が入り、全学で賛同を募る活動もインターネットで始まった。憲法学者の多くが「違憲」とする法案を強行しようとする政権の動きに、小松浩教授(憲法)は「専門知を軽視し、学問を侮辱する政権への憤りが広がっている」と厳しく批判した。
東京学芸大の教員有志七十八人は十四日、法案の撤回を求めて緊急アピールを発表。とりまとめた教育学部の及川英二郎准教授(近現代史)は「強行採決を何としても阻止したいと賛同を募った」。十六日に学内集会を開く。
◆学者9000人「廃案を」「採決反対」市民団体 
■「安全保障関連法案に反対する学者の会」は14日、緊急要請行動として会の呼び掛け人14人が衆院特別委員会の自民、公明、民主、維新、共産各党の理事や委員の議員室を衆院議員会館に訪ね、強行採決せず廃案とするよう訴えた。
参加したのは佐藤学学習院大教授(教育学)ら=写真。思想家の内田樹氏ら4人は与党側筆頭理事を務める江渡聡徳前防衛相(自民)の議員室を訪れ「9000人以上の学者が法案に我慢しきれず反対の意思表示をしている事実を重く受け止めてほしい」と秘書に伝えた。
社会学者の上野千鶴子氏は江渡氏の議員室を訪ねた後に「憲法に違反する法律をつくったら、立法府まるごと、議員全員が憲法違反を犯すことになりますよ」と強調した。会には6月の発足からこの日までに、呼び掛け人61人、賛同者9766人の計9827人の学者が名を連ねている。
■海外で人道支援や協力活動をする団体の有志がつくった「NGO非戦ネット」は14日、自衛隊が海外で武力を行使すれば、非政府組織(NGO)の活動環境は著しく危険になるなどとして、安全保障関連法案の採決に反対する声明を発表した。声明では、安保法案は日本を戦争ができる国にしようとするもので、憲法の平和主義に反すると指摘。非軍事の国際貢献が必要だとしている。
■市民団体のピースボート(東京)と韓国の環境NGO「環境財団」は14日、安全保障関連法案の採決に反対する共同声明を出した。声明は「憲法解釈を変えて集団的自衛権行使を容認することは相互不信を増幅し、アジアの緊張を高める」と政府を批判。近隣諸国の市民の声に耳を傾け、立憲主義を尊重するよう求めている。