東京社説)「違憲」安保法制 「理解せよ」と迫る傲慢 - 東京新聞(2015年7月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015071502000145.html
http://megalodon.jp/2015-0715-1023-56/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015071502000145.html

しかし、報道各社の世論調査を見ると、首相が述べたように「理解が進んできた」とは言い難い。
共同通信社が六月下旬に行った全国電世論調査によると、安保法案が「憲法に違反していると思う」との答えは56・7%に上る。法案に「反対」は五月の前回調査から11・1ポイント上昇して58・7%、今国会成立に「反対」も8ポイント増の63・1%に達する。
今月に入って報道各社が相次いで行った世論調査でも、同じ傾向の調査結果が出ている。
歴代内閣が憲法違反としてきた集団的自衛権の行使に一転、道を開き、海外で戦闘に巻き込まれる危険性を高めるなど、戦後日本の専守防衛政策を根本から変質させる安保法案である。
憲法学者の多くが違憲と断じたにもかかわらず、法案を合憲だとして押し切ろうとする政府・与党と、「違憲」立法を認めない国民との乖離(かいり)は広がるばかりだ。
閣内からはようやく「国民の理解は世論調査の通り、まだ進んでいるとは言えない」(石破茂地方創生担当相)「世論調査などを見ると、説明が十分だという理解は進んでいない」(塩崎恭久厚生労働相)との意見が出始めた。
遅きに失した感はあるが、閣内から採決強行への慎重論が出た今こそ、法案撤回・廃案の潮時ではないか。法案への国民の理解が進まないのは、説明が足りないからではない。理解しがたい内容だからだと警鐘を鳴らしておきたい。