佐世保同級生殺害、少女の医療少年院送致決定 長崎家裁 - 朝日新聞(2015年7月13日)

http://www.asahi.com/articles/ASH7D5GYHH7DTOLB00X.html
http://megalodon.jp/2015-0713-2248-18/www.asahi.com/articles/ASH7D5GYHH7DTOLB00X.html

長崎県佐世保市で昨年7月、高校1年生の女子生徒(当時15)が殺害された事件で、殺人や死体損壊などの非行内容で家裁送致されていた元同級生の少女(16)について、長崎家裁(平井健一郎裁判長)は13日、第3種(医療)少年院に送致する保護処分を決定した。少女には、重度の自閉症スペクトラム障害(ASD)など複数の障害があると認定。小学校で問題が顕在化した際に適切な対応がなされなかったことなどと相まって非行に至ったと指摘した。
決定要旨によると、少女は昨年7月26日夜、佐世保市の自宅マンションに女子生徒を招き、首を絞めるなどして殺害。刃物で遺体を損壊した。約5カ月前の3月2日には市内の自宅で就寝中の父親を金属バットで殴り、殺害しようとした。
決定は、少女の非行について「残虐さ、非人間性には戦慄(せんりつ)を禁じ得ない」としたうえで、処分や刑罰が重くなる16歳の誕生日直前の非行だったことにも触れ、「計画性の高さ、殺意の強固さも際立っている」と指摘した。
一方、少女には、人の痛みや苦しみが理解できない重い「共感性障害」などASDの特性のほか、「素行障害」があると認定。決めたことは迷いなく遂行する性格などが絡み合い、「ASDの中でも非常に特殊な例」と判断した。
その上で、小学生時代に給食に異物を混入した事件で問題が発覚しながらも、周囲から適切な保護や対応がとられなかったことや、実母の死を体験したことで、人を殺したいという特異な関心を抑制できなくなった、と非行に至る経緯を分析した。
遺族に厳罰を望む感情がある中でも、検察官送致(逆送)を選択しなかったのは「刑罰による抑止は効果がない。刑務所は特性に応じたプログラムが十分でなく、かえって症状が悪化する可能性がある」と説明。精神科医らによる長期の矯正教育と医療支援が必要と結論づけた。
医療少年院の収容期間は最長でおおむね26歳未満まで。生活指導や贖罪(しょくざい)指導などの教育と並行して、精神療法やカウンセリングといった治療を受ける。専門の教官らが両親の役などを務める「模擬家族」を作り、生活を共にして育て直す特別なプログラムが組まれる可能性があるという。
少女については、家裁と長崎地検佐世保支部はそれぞれ精神鑑定を実施。地検は刑事責任能力があるとして「刑事処分相当」の意見を付けて家裁送致。女子生徒の父親も逆送による裁判員裁判を求めていた。
決定は、不安定な少年を支える社会のあり方にも言及。「今後も同様の問題を抱えた青少年が現れる可能性は否定できず、そのような少年の対応に取り組む体制を構築していくことも重要である」と投げかけた。

     ◇

自閉症スペクトラム障害(ASD)〉 発達障害の一種。米国の学会は「他人と情緒的な関係を築けない」「異常なほど興味を持った対象に執着する」といった診断基準を示している。広汎(こうはん)性発達障害とも呼ばれていた。