(産経抄)わかっちゃいるけど 7月9日 - 産経ニュース(2015年7月9日)

(1/2)http://www.sankei.com/column/news/150709/clm1507090004-n1.html
(2/2)http://www.sankei.com/column/news/150709/clm1507090004-n2.html

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(2/2)http://megalodon.jp/2015-0709-1503-53/www.sankei.com/column/news/150709/clm1507090004-n2.html

クレージーキャッツ」のメンバーとして、人気が急上昇していた植木等さんに昭和36年、ソロデビューの話が持ち上がる。受け取った曲が、青島幸男さん作詞の「スーダラ節」だった。
▼二枚目歌手を目指していた植木さんは、困惑する。試しに僧侶だった父親の前で歌ってみた。「♪分かっちゃいるけど、やめられねぇ」。反応は、意外なものだった。「人間の真理を突いたすばらしい歌だ。ヒットするぞ」。その通りになった。
▼2020年東京五輪パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場について、建設のゴーサインを出した有識者の皆さんも、「分かっちゃいる」はずである。ロンドン五輪スタジアムの約3倍に当たる、2520億円はいくらなんでも高すぎる。財源不足を補う当てもない。7日に開かれた会議では、それでも「やめられねぇ」ことを確認したようだ。
▼建築家の安藤忠雄さんの欠席は残念だった。建築費が跳ね上がった最大の要因は、イラク出身の建築家、ザハ・ハディドさんによる、2本の巨大アーチの奇抜なデザインである。彼女の設計案は、安藤さんが審査委員長を務めた国際コンペで採用が決まった。いわばこの問題の「張本人」の意見をぜひ、聞きたかった。
▼先行きが不透明ななか、耳によみがえってくるのは、やはり植木さんのヒット曲「だまって俺について来い」である。「♪そのうちなんとかなるだろう」。はっきりしているのは、一つだけだ。建設が失敗に終わっても、誰も責任を取るつもりはない。
▼映画「無責任シリーズ」で一世を風靡(ふうび)した植木さんの素顔は、超がつくほどのマジメ人間だった。「スーダラ節」がヒットするようでは日本はおしまい、と本気で心配していたそうだ。