手作り資料で戦争展 小川の笠原さん平和訴え11回目:埼玉 - 東京新聞(2015年7月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20150704/CK2015070402000151.html
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戦争体験者の証言や憲法と国民生活のかかわり、沖縄の基地問題など、手作りの資料を中心に展示する「第十一回平和のための小川町戦争展」が、小川町立図書館地階ギャラリーで開かれている。「戦争展」は同町の元小学校教諭笠原恵子さん(67)が二〇〇五年に始め、二回目からは実行委員会形式で毎年夏に続けてきた。今年の目玉展示は笠原さんが模造紙に手書きでまとめた戦後七十年史。笠原さんは「日本の安保政策の転換の前には必ずアメリカ側の要請があったことが、あらためて分かる」と話している。 (中里宏)
笠原さんは〇五年三月に町立小川小学校を最後に退職。授業用の資料や参考書類を処分したが、平和教育用の教材はどうしても捨てる気にならず、手元に残った。知人の勧めもあって同年八月、写真パネルなどを使った第一回の戦争展を開いた。
三、四回目には特別企画として、戦時中、名古屋市の東山動物園が猛獣処分命令から守り抜いた象が戦後、多くの子どもたちに娯楽を与えた実話を基にした合唱組曲ぞうれっしゃがやってきた」のコンサートを町民会館で開催。中学生になった教え子や保護者ら百人以上が歌った。四回目からは「小川町独自の資料を展示しよう」と町民の戦争体験の聞き取り調査を開始。証言のパネル展示も続けている。聞き取りは九十人以上に上り、小冊子「先輩からの伝言」にまとめて第三集まで発行した。
中国戦線の元兵士や東京大空襲の体験者らの聞き取りを続けながら「なぜこんなにひどいことが起きてしまったのか」という疑問がつきまとった。「歴史の全体像が分かれば、個々の証言の背景も分かる」と、昨年からは明治維新から敗戦までの手作り年表も展示する。「死は鴻毛(こうもう)(鳥の羽根)より軽しと心得よ」とする明治時代の「軍人勅諭」や、治安維持法、軍機保護法、国家総動員法など「戦争遂行のために国民を縛る法律などが次々につくられていったことが分かる」という。
今年作った戦後七十年史は模造紙十五枚、長さ十二メートルになった。日本と米国の動きを対比して、連合軍の占領、警察予備隊(現自衛隊)の発足から現在、国会審議中の集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案までをまとめた。「安保関連法案の審議は、日本国憲法がいかに国民のために大事なものかを分からせてくれる」と話す。
「戦争展」は十二日まで(月曜休館)。特別企画は五日午後二時から、ソプラノ歌手大塚秀子さんらによる「朗読と歌のつどい」、十一日午前十時、午後三時にアニメ版「はだしのゲン」上映。いずれも同図書館視聴覚ホールで入場無料。