フジテレビ「池上彰緊急スペシャル」の「字幕取り違え」事件についての私見――テレビ報道の映像・字幕翻訳者としての経験から(韓東賢さん) - SYNODOS(2015年7月2日)

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おそらくそこにあったのは、ただただ、「決めつけられた前提のもとで、何も考えずに進行していくずさんな仕事」だったのだと思う。そのようなずさんな仕事の場に、発言者やもとの資料の文脈を考慮する余地はない。
繰り返しになるがそこにあるのはあらかじめ決められた前提どおりに作り、とどこおりなく終わらせる、ということだけで、もしかすると、自覚的な「悪意」どころか何らかの「意図」すらもないかもしれない。また近年、経費も削られるなかでそのような空気にさらに拍車がかかっているのではないかとも想像する(翻訳の単価も下がる一方だと聞く)。
かつてはどうせバレやしない、どうせ見ている人も反発しない対象だからとタカをくくって北朝鮮についてやっていたことが、今は韓国についてもできているのだとしたら、だ。
このような空気が今回、「ねつ造」と言われても仕方のないミスを生んだのではないか。今回の件は、番組作りにおいて、そもそも「あおりありき」という内容的な問題と、日々忙しいなかで多くは下請けの制作会社や契約のスタッフが追い立てられながら「やっつけ」でやっているという方法的な問題が、一番悪いかたちで結びつき、露呈した事件だろう。そして、この2つは別々の問題ではなく、同じ構造から生まれている同根の問題だと思う。<<