原爆の恐怖 風化させぬ 映画「ひろしま」再評価、各地で上映会:千葉 - 東京新聞(2015年6月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20150630/CK2015063002000147.html
http://megalodon.jp/2015-0630-0927-54/www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20150630/CK2015063002000147.html

原爆投下の惨状や恐怖を描いた映画「」(関川秀雄監督)。一九五三年の制作当時はあまり注目されなかったが、近年見直され、各地で自主上映会が広がっている。映画に光を当て、普及活動に尽力した映画プロデューサーの小林一平さんは今年二月に急逝。長男の開さん(42)が父の意思を引き継いだ。七月二十五日には、我孫子市のけやきプラザで上映会を開催。開さんや主催者は「戦後七十年の今、もう一度平和について考えたい」と話している。 (三輪喜人)
映画は、広島で被爆した子どもたちの体験記「原爆の子〜広島の少年少女のうったえ」(長田新編)が原作。原爆が投下された直後の救護所の悲惨な状況、終戦後の被爆者たちの苦しみを映像化した。
戦後八年たった広島をロケ地に、実際に被爆した市民らを含む約八万八千五百人がエキストラとして出演。全国の教職員ら五十万人のカンパを制作費に充てた。
五五年には、ベルリン国際映画祭長編映画賞を受賞し、高く評価された。しかし、大手映画会社が一部シーンの削除を要求。制作側が断ったため、当時は上映されることが少なかった。
故・小林一平さんは、父が映画の監督補佐を務め、遺作を振り返る中で映画を再発見した。「核廃絶と命の尊さを訴えるため、後世に残したい」と、二〇〇八年ごろから各地で自主上映を始めた。とくに原発事故後に注目を集め、上映会の輪が広がった。
一平さんの意思を引き継いだ開さんは「迫真の演技で、命の大切さが表現されている。当時の映画人のすごさを感じる」と話す。
今回の上映会は、我孫子市民でつくる「観(み)る会」が主催する。県内では浦安や市原両市などに続き六カ所目。浜田洋子会長(78)が「風化させてはいけない」との強い思いで準備してきた。
浜田さんは広島市生まれ。三歳で転居し、被爆はしていないが四八年、小学六年のときに市内に戻ってきた。
原爆投下から三年たっていたが、橋は欄干が落ちたまま。校舎は爆風で壊れ、教室のガラスは割れっぱなしだった。「これが一発の爆弾で起きたことなのか」と信じられなかった。
戦後七十年たち、当時を知る人が減っていることを危ぶむ。「今語らなければならない。若い人にこそ見てもらいたい」と話した。
上映会は午前十時、午後二時、午後六時の三回。前売り、当日券ともに大人・大学生千円、高校生五百円、中学生以下は無料。問い合わせは、観る会=電090(8051)4048=へ。