秘密保護法 監視役が果たせるのか - 東京新聞(2015年6月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015063002000160.html
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政府が初めて特定秘密保護法に基づく秘密指定の運用状況に関する国会報告をした。衆参両院には「情報監視審査会」が置かれている。本当に客観的なチェックができるのか、その機能が試される。
「特定秘密」と指定された件数は計三百八十二件だった。防衛省が二百四十七件、内閣官房が四十九件、外務省が三十五件などだ。暗号や情報収集衛星関連、武器関連が大半を占めている。
秘密保護法が強い批判を受けたのは、行政機関の「長」が恣意(しい)的に重要情報を秘密指定してしまわないかと懸念された点だ。本来、国民に知らされるべき情報であっても、政府が隠しては、主権者として正しい判断ができなくなる。そのため、秘密の指定が的確であるかどうかは厳格かつ慎重に検討されねばならない。
内閣府に「独立公文書管理監」などを置く仕組みが設けられてはいるものの、“身内”の監視機関である。そこで、衆参両院に設けられた「情報監視審査会」が重要な役目になるはずだ。
審査会は今回の報告を踏まえ、秘密指定に誤りがないか適切に調べねばならない。委員の国会議員には監視役としての自覚を十分に持ってもらいたい。衆院の場合だと、八人の委員のうち、自民党が五人、民主党、維新の党、公明党が各一人という構成である。これが機能しなければ、たんなる政府の追認機関になる。
政府の外側から特定秘密を知ることができる唯一の存在である。秘密の概要が示された「特定秘密指定管理簿」も今回、提出されたものの、内容はあまりに茫漠(ぼうばく)としている。今後、さらなる情報開示を求め続けねばならない。国民の代表として、審査会は秘密指定の妥当性などについて調べ、その権限を最大限に発揮すべきである。
ただし、元来、欠陥のある制度でもある点を再確認したい。仮に不適切な秘密指定が判明し、指定解除をするよう政府に勧告することはできても、その法的拘束力はない。
政府は「安全保障上の必要性」を理由に、審査会への秘密提供を拒否することもできる仕組みだ。明らかに政府が国会に優越している構図だ。
秘密保護法は与党の強行採決で成立したときに、国民の「知る権利」を阻害することが強く批判された。秘密でない一般情報さえ提供されにくくなる恐れがある。法の廃止を求める動きが根強いことも忘れてはならない。