新安保法制 国会会期延長 違憲でも押し通すのか - 北海道新聞(2015年6月23日)

06/23 08:55
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0027054.html
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国会はきのう、24日までの会期を9月27日まで95日間延長することを決めた。
通常国会としては過去最長の延長幅だ。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案を、何としてでも今国会で成立させようという安倍晋三政権の意思の表れだろう。
だが関連法案は、その土台が揺らいでいる。
衆院憲法審査会で憲法学者3氏が違憲と断じたのに続き、きのうの衆院特別委員会の参考人質疑でも、元内閣法制局長官2氏が違憲などと批判した。
政府は躍起になって合憲だと説明しているが、国民の多くは納得せず、今国会での成立に反対する声が強い。
会期延長によって形式的に審議時間を積み上げ、違憲性が拭えない法案を無理やり押し通すことは許されない。
第1次安倍内閣などで内閣法制局長官を務めた宮崎礼壹(れいいち)氏は参考人質疑で、集団的自衛権行使は「憲法上、許されない」と結論づけた1972年政府見解を安倍政権が行使容認の根拠としていることについて「黒を白と言いくるめる類いだ」と批判した。
その上で「行使容認は限定的なものも含めて憲法9条に違反している」と言明し、関連法案の撤回を求めた。
小泉純一郎内閣で長官を務めた阪田雅裕氏も、首相が集団的自衛権の行使例とする中東ホルムズ海峡の機雷封鎖について「わが国の存立を脅かす事態に至りようがない」と指摘し、「従来の政府見解を明らかに逸脱している」と強調した。
現長官の横畠裕介氏は首相官邸の方針を追認するばかりだが、本来、法制局は憲法を頂点とする法体系が保たれているかをチェックする機関である。
その長官経験者が法案を違憲としたことの意味は重い。
今回の大幅延長は、法案の衆院可決後、参院で60日たっても採決されない場合、憲法の規定に従って衆院で再議決できる「60日ルール」の適用も視野に入れている。
「夏までの成立」を米国に約束した首相としては、是が非でも今国会で成立させたいのだろう。
だが共同通信社世論調査では、関連法案が「憲法に違反していると思う」との回答は56%、今国会成立に「反対」が63%に上る。
「対米公約」を優先して国民の声に耳をふさぐのは本末転倒である。法案は取り下げるべきだ。