「安保環境の変化」首相次第で変わる見方 - 東京新聞(2015年6月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015062102000120.html
http://megalodon.jp/2015-0621-1722-10/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015062102000120.html

Q 「違憲」との批判が高まる安全保障関連法について、政府は合憲と反論しています。砂川判決のほか、一九七二年の政府見解を根拠にしています。
A 七二年見解は自衛権について、(1)自国の存立のための行使は禁止されていない(2)憲法上、必要最小限度の行使にとどまる(3)したがって他国防衛を目的とする集団的自衛権の行使は憲法上、許されない、との論理構成になっています。
Q 今回も論理は同じだそうです。
A 政府は(1)と(2)の論理は維持しながら、新三要件の「他国への攻撃であっても自国の存立が脅かされる事態」であれば、例外的に武力行使できる、すなわち集団的自衛権の行使は認められるとしています。憲法違反との指摘がある新三要件をあてはめて合憲とするのは無理筋といえます。
Q なぜ政府は(3)の結論を変えたの?
A 「わが国を取り巻く安全保障環境の変化」を理由にしています。安倍晋三首相は私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」を招集した二〇一三年二月八日の会合で「安全保障環境は一層厳しさを増している」と述べました。一度目の首相だった〇七年五月十八日、初めて安保法制懇を招集した際に「格段に厳しさを増している」と述べています。同じ意味です。
Q 〇七年から安保環境は厳しかったのですね。
A それなら安倍首相の後の福田康夫麻生太郎両首相や民主党の首相たちはなぜ安全保障法制を整備しなかったのでしょうか。福田首相憲法解釈の変更を進言した報告書を棚上げしています。安倍首相とは見解が異なるようです。
Q 安倍首相は領空侵犯に備えた自衛隊機の緊急発進が十年前の七倍に増えたといっています。
A 昨年の緊急発進は九百四十三回で、〇四年の百四十一回に対し七倍近くに増えています。しかし、冷戦期の一九八四年には九百四十四回あり、当時八百回、九百回を超えるのは珍しくありませんでした。
Q 防衛省の見方は?
A 一四年版防衛白書の「わが国を取り巻く安全保障環境」には、わが国周辺には領土問題などの「不安定・不確実な要素が残されている」とあります。しかし、冷戦期の防衛白書は「ソ連は、わが国に対する潜在的脅威を増大させている」(一九八四年版)と「脅威」という強い用語を使っています。冷戦期の方が緊迫していたという見方ではないでしょうか。