安保法案抗議 寂聴さん会見要旨 「すぐ後ろに軍靴の音が…」 - 東京新聞(2015年6月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015061902000137.html
http://megalodon.jp/2015-0619-1002-08/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015061902000137.html

瀬戸内寂聴さんが、スピーチ後の記者会見で話した内容の要旨は以下の通り。
きょうはひそかに来るつもりでいた。(報道陣の)みなさんにお会いできると思っておらず、びっくりしている。ずっと京都で病気の療養をしており、一昨日に思いついて昨日、参った。一年間寝ていて完全に治っておらず、一人ではよろよろして歩けないので、無事に帰れるかなと心の片隅で思っていた。「もう私はここで死んでも良い」という気持ちで来た。九十三歳になり、飽き飽きして、いつでも死んで良いと思っている。
私は終戦で、「正しい戦争だ」と丸々信じ込んでいたばかさ加減に気付いた。「これからは自分の手や皮膚で触り、感じたことだけを信じていこう」というのが私の戦後の革命だった。その後、小さな子供を残して夫の家を出て放浪の生活が始まったが、自分のしたいことをしたので、苦労したとは思わない。五十一歳で出家し、仏教の思想がだいぶ入った。お釈迦(しゃか)さまの言葉で一番素晴らしいのは「殺すなかれ、殺させるなかれ」。人間が一番守らねばならない、幸せになる根本の思想だ。
しかし、また戦争がいまにも始まりそうな気配になってきている。いまの日本の状態は昭和十六、七年ごろの雰囲気だ。(あのころは)学校も食べ物もあり、普通の生活をしていた。でもだんだんと戦争に傾いていくと「欲しがりません勝つまでは」とか、「ぜいたくはしちゃいけない」と言って着物の袖を切ったりとばかみたいなことが始まった。それまでのように自由じゃなくなってきた。(いまの日本も)表向きは平和だが、すぐ少し後ろの方に軍靴の音が続々と聞こえている、そういう危険な感じがする。
このまま安倍さんの思想で政治が続いていったら、やはり戦争になると思う。それを防がなければならない。私も最後の力を出して戦争を反対する行動を起こしたい。もし今度の上京で死ぬことがあっても、自己責任だと思って来た。
安倍さんは「戦争じゃない」と言っているが、憲法九条を壊して戦争のできる国にされたら「戦争をしない」と言っても世界が認めないでしょう。安倍さんはおじいさん(岸信介元首相)の後ばっかり追わないで、もっと日本国民の身になって考えてほしい。子供を戦争で殺される人の悲惨さが分からないのではないか。人間は自分で経験しないと分からない。 
今回、東京に来たのは「国会の前で座りたい」と思ったから。(最初は)年寄りたちを集めて国会の前に座りたかった。そうすれば、必ず冷えて、年寄りが三人や四人死ぬでしょ。あなた方(報道陣)はほっとけないから、大騒ぎするでしょ、話が盛り上がると思って。でもみんなが死んだら大変なことになる。(お年寄りを)誘わないで一人で行くことにした。
今後も戦争反対について、同じことを言ったり、書いたりしていきたい。私はものを書く仕事を与えられているし、法話もしている。集まってくれた人たちにこういう気持ちを伝えたい。