憲法語る大学トップの思いとは(考 民主主義はいま) - 朝日新聞(2015年5月26日)

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憲法の理念を大切にしてほしい――。この春、大学の卒業式で、総長や学長がそんなメッセージを相次いで放った。同志社大京都市)で「個人主義」の大切さを説いた大谷実総長(80)の祝辞は、インターネットなどでも話題になっている。国会で改憲の議論が本格化する中、大谷総長の思いを聞いた。
■大谷総長の祝辞(要旨
私は、今日の我が国の社会や個人の考え方の基本、価値観は、個人主義に帰着すると考える。個人主義は、最近では「個人の尊重」とか「個人の尊厳」と呼ばれているが、最も尊重すべきものは「一人ひとりの個人」で、国や社会は何にも勝って、個人の自由な考え方や生き方を大切に扱わなければならないという原則だ。個人主義は、利己主義に反対し、全体主義とも反対する。
日本の憲法は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、国政の上で最大の尊重を必要とする」と定めている。
安倍首相の憲法改正の意欲は並々ならぬものがある。自民党憲法改正草案では、「個人の尊重」という文言は改められ、「人の尊重」となっている。「個人主義を助長してきた嫌いがあるので改める」というものだ。個人主義を、柔らかい形ではあるが改めようとしている。これまで明確に否定されてきた全体主義への転換を目指していると言ってよいかと思う。