仏アレバ危機 原発は割に合わない- 東京新聞(2015年5月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015051402000184.html
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世界最大の原子力企業体が苦境に立たされた。巨額の赤字を抱えた仏アレバ社の経営危機は深刻で、再建策として政府とのさらなる連携も模索する。もはや原発は一企業の手に負えるものではない。
アレバ社は、世界各地で原発の建設などを手掛けてきた。青森県六ケ所村の核燃料サイクル施設もアレバの技術に依存するなど、国際的にも強い影響力を持つ。
従業員四万五千人。株式のほとんどを仏政府が所有する国営企業といっていい。
アレバを窮地に追い込んだのは、フランスとフィンランドで建設中の新型原発だ。
欧州加圧水型(EPR)というその原子炉は、一九七九年の米スリーマイル島原発事故を教訓にした安全性が売り物だった。
事故で炉心溶融メルトダウン)を起こしても、「コアキャッチャー」と呼ばれる巨大な皿が溶けた核燃料を受け止める。貯水タンクの水が自動的に流れ込み、冷やす仕組みになっている。
二〇〇一年、9・11米中枢同時テロが発生すると、大型旅客機の衝突に備えて、強化コンクリートの分厚い壁で原子炉を取り囲む必要に迫られた。
安全を追求すればするほど経費はかさみ、工期は延びる。
フィンランドで〇五年に着工したオルキルオト原発3号機は、〇九年に完成するはずだった。ところが、資材調達の遅れや設計の不具合といったトラブルが続いて工期延長が相次ぎ、建設費の見積もりは当初の三倍に膨れ上がって、一兆円を突破した。
仏西部のフラマンビル原発3号機も同様で、建設費は当初の二倍になる見込みという。
そして福島の事故を経て、原発の安全に対する要求は一段と高まった。欧州で建設中の原発は、オルキルオトとフラマンビルの二基だけだ。
シェールガスへの転換が進む米国でも、スリーマイルの事故以来、原発の新増設はない。
日本政府は、三〇年の原発比率を20〜22%にしたいという。四十年寿命の決まりを守っていれば、建て替え、新増設なしには達成できない数字である。
そのために、どれだけ費用がかかるのか。電力事業が自由化されても採算が取れるのか。英国のように国費をつぎ込むのだろうか。
フクシマが時代を変えた。
原発は、もはや割に合わないと、斜陽のアレバが証明しつつあるではないか。