(筆洗)作曲のため、ピアノの前に座るとメロディーが頭の中を通り過ぎ…: - 東京新聞(2015年5月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015051402000136.html
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作曲のため、ピアノの前に座るとメロディーが頭の中を通り過ぎていったそうである。米シンガー・ソングライターキャロル・キングさん(73)がインタビューで語っていた。その曲とは一九七一年発表の「君の友だち」

日本でもヒットした。<冬でも春でも夏でも秋でも>困難な時は、ただ私を呼んでよ。走って会いに行くから。そんな内容の友情の歌。優しく語りかけるような歌声に元気づけられたという人もいるだろう。
歌詞の内容に、最近、そんな話を聞いたなと思った方もいるか。安倍首相が高校生の時にこの曲を聴き「心を揺さぶられた」と米議会演説で歌詞を引用し、東日本大震災での米軍の支援に感謝の意を表明した。「私たちにはトモダチがいました」。
どうも政府の考えと、この歌との「落差」を感じるのである。復興庁は二〇一六年度からの五年間に行う東日本大震災の復興事業の基本方針で、一部の復興事業について、被災地自治体に一定の負担を求める考えを明らかにした。これまでは全額、国が面倒を見ていた。被災地自治体には重い荷となる。
国の財政事情や税の公平性への考慮も必要だが、打ちひしがれる友に向かい、「自立の意志を持って」(竹下亘復興相)とはあまりに寂しくないか。
岩手では昨日も震度5強地震。四年余が経過しても困難な時が続く。まだ助けが必要な「友」がいる。