へいわのうた 9条を描き出す人たち(5) 各地に平和のバラ園を:神奈川 - 東京新聞(2015年5月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150508/CK2015050802000122.html
http://megalodon.jp/2015-0508-0945-43/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150508/CK2015050802000122.html

◆OCS代表・樋口義博さん(横浜市青葉区
横浜市青葉区フリースクール「のむぎオープン・コミュニティー・スクール(OCS)」には、三百株ほどのバラが並ぶ「平和のバラ園」がある。アンネ・フランクにちなんだ「アンネ」、横浜米軍機墜落事件(一九七七年)で犠牲になった土志田和枝さんの名前を冠した「カズエ」、そして「ピース」−。どれも平和や反戦への願いのこもった品種が植えられている。
OCS代表の樋口義博さん(67)はバラ園を十六年間、維持してきた。それが今年、新たな展開を迎える。五月下旬、長野県の三カ所に新しい「平和のバラ園」を整備する取り組みだ。「横浜から長野までを三週間で踏破し、途中の佐久市小諸市、目的地の上田市に小さなバラ園をつくる」
賛同が広がり、バラを植える土地の提供者が各地で相次ぐ。バラ園を結んだ三百キロの道のりを樋口さんは「自由民権の道」と名付け、道中では平和にちなんだ場所を巡りながら、OCSの生徒と教員で歩く。
東京都町田市では、町田米軍機墜落事故(一九六四年)の現場付近を訪問。犠牲者の母子をモデルにした銅像を建立するため、寄付を募っている団体に会う。あきる野市では、明治時代に自由民権運動家が基本的人権を盛り込んで起草した「五日市憲法」を学ぶ。
元高校教諭の樋口さんが私財を投じて二十四年前に開校したOCSでは、平和教育に力を入れる。不自由を感じて不登校になった子どもたちにこそ、「自由、民主主義、憲法の大切さを知ってほしい」という。
これまでに送り出した生徒は二百人。十年前には生徒の自主的な創作により、明治時代の流行歌「オッペケペー節」のリズムに合わせて和太鼓を演奏し、憲法九条の条文を力強く読み上げる演目「平和太鼓」が完成し、代々受け継いでいた。今は生徒数が減って途絶えているが、早く復活させたいと考えている。
非営利のOCSは行政の補助金も受けていない。運営は年々、厳しくなっているが、「若者が戦争に巻き込まれる事態が現実味を帯びてきた。今が正念場」と踏ん張る。「自由民権の道」の途中にバラ園をたくさんつくり、「平和の尊さを思い返す機会をできるだけ多く設けたい」と語る。
OCSの平和のバラ園では、大型連休を前に整備作業が本格化していた。急に気温が上がったからか、「つぼみが急に膨らんできた」。平和を願うバラは今年も、満開で人々を迎えようとしている。 (志村彰太)