ギュンター・グラス氏死去 ノーベル賞「ブリキの太鼓」- 東京新聞(2015年4月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/obituaries/CK2015041402000160.html
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【ベルリン=宮本隆彦】DPA通信によると、現代ドイツを代表する作家で、ノーベル文学賞受賞者のギュンター・グラス氏が十三日、自宅近くのドイツ北部リューベックの病院で感染症のため死去した。八十七歳だった。一九五九年に発表した初の小説「ブリキの太鼓」は、三歳で成長を止めた子どもの目でナチズムに染まる社会を描き、歴史と向き合うドイツを代表する存在とされた。

二七年、ダンチヒ(現ポーランドグダニスク)生まれ。炭鉱労働者や石工などの職を転々とした。五六年にパリに移り、四年がかりで書き上げた初の長編「ブリキの太鼓」が世界的なベストセラーに。「陽気で不吉な寓話(ぐうわ)が、歴史の忘れられた表情を描いた」として、九九年のノーベル文学賞を受賞した。

二〇〇六年八月、独紙のインタビューや直後に発表した自伝的作品「玉ねぎの皮をむきながら」で十七歳の時にナチス武装親衛隊に加わった過去を告白。ドイツ社会に衝撃を与えた。

中道左派社会民主党を支持し、政治的な発言にも積極的だった。一九九〇年の東西ドイツ統一時には、ドイツが再び傲慢(ごうまん)な大国となることを警戒し、統一に反対した。二〇一二年には、イラン核問題をめぐりイスラエルを批判した。

作家の大江健三郎氏と親交が深かった。東日本大震災直後の一一年四月、独紙に「多くの人が原子力の危険性に気づいた」「原子力の圧力団体を連邦議会から締め出し、政治をより独立させるべきだ」と語った。


玉ねぎの皮をむきながら

玉ねぎの皮をむきながら