閣議で決める安倍政治:私説・論説室から-東京新聞(2015年4月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015040602000133.html
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自衛隊を海外に派遣する最初の恒久法、国連平和維持活動(PKO)協力法は一九九二年に制定された。カンボジアに派遣される航空自衛隊の編成完結式の訓示で、当時の石塚勲航空幕僚長は「国軍としての自衛隊」と述べ、問題になった。
翌日の記者会見で石塚氏は「言い方がまずかった……アジアの人は国軍として見るかもしれない。みんな規律正しく誠実に気をつけてほしいと言うつもりだった」と釈明した。翻って、自衛隊を「わが軍」と呼んだ安倍晋三首相の発言は、まともに追及される様子もない。海外派遣そのものが大問題だった九二年当時と海外における武力行使まで認めようとしている現状との違いが現れている。
現在の状況をつくり出しているのは、自民党が一強の国会というより、党内で一強となっている安倍首相である。
その証拠に安全保障にかかわる重要案件の多くは国会ではなく、閣議で決定されている。積極的平和主義を盛り込んだ国家安全保障戦略、武器輸出を解禁した防衛装備移転三原則、集団的自衛権行使を認めた昨年七月の閣議決定、政府開発援助(ODA)を他国軍へ広げた開発協力大綱など。そして与党は閣議決定を追認するばかりだ。
閣議によって日本が変わり、安倍首相の一人勝ちが演出される。専制的な政治手法のもと、国民主権がかすんでみえる。 (半田滋)