「江戸しぐさ」に高まる批判の声、ラジオ・ネットメディアに続き東京新聞も特集-Yomerumoまとめ編集部(2015年4月6日)

http://news.merumo.ne.jp/article/genre/2703406
http://megalodon.jp/2015-0407-1631-16/news.merumo.ne.jp/article/genre/2703406

ACジャパンのキャンペーンや文部科学省の道徳教材で紹介されたことでも知られる「江戸しぐさ」への批判が強まっています。

私たちの道徳 小学校5・6年(58,59ページ)-文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/doutoku/detail/1344254.htm

NPO法人江戸しぐさ」が江戸時代の町人に由来すると主張している「江戸しぐさ」は、以前からネットを中心に疑問の声があったものの、全国の小学校や公機関、会社の研修などで好意的に利用され「江戸しぐさブーム」とまで言われる状況になっています。
そんな中、今月2日に放送されたTBSラジオの人気番組「荻上チキ・Session-22」に、2014年に発売され注目を集めた「江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統」(星海社新書)の著者で歴史研究家の原田実氏が出演。「江戸しぐさ」について語り、注目を集めました。

※関連リンク:『江戸しぐさ』は、本当に日本の伝統なのか?」(検証モード) - TBSラジオ
http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/04/20150402-1.html

それを受けてフリーライター赤木智弘氏は

江戸しぐさとは、江戸という過去の権威性を、道徳の押し付けに利用しているものにすぎない。」
江戸しぐさ偽史であることがいくら指摘されても『そんな固いことを言わずに』的なごまかしが通用してしまう」
「たかが江戸しぐさではあるが、江戸しぐさ程度のことすらまともに批判できない人たちが、もっと世の中の重大で、かつ単純な正しさでは論争できないような入り組んだ事例に対して、まともに対応できるとは思えないのだ。」

※「日本は、いい話への耐性が低い社会である- BLOGOS」より
日本は、いい話への耐性が低い社会である(赤木智弘さん)-BLOGOS(2015年4月5日)
http://blogos.com/outline/109397/

今の日本には多くの「いい話という旗印」が蔓延している。
お国のために、社会のために、学校のために、子供たちのために、地域のために。
その一方で「それが本当に、そのためになっているのか?」という検証については、多くの人が口を閉ざしている。または「空気を読め」「余計な指摘をするな」と、まるで批判をしている人が、そのためになることを考えずに、わがままを言っているかのような反発を受けてしまう。
これはやはり、日本人の多くは「善意」と「より良いこと」の区別がついていないということなのだろう。
「善意は必ず良いことである」という前提を無批判なまま受け入れ、善意を権威に仕立てあげる。そして権威は当然自らの功績を「正しいこと」として喧伝する。
この喧伝は、決して誰かが意図的に行うのではない。ただ「善意で行ったのだから、その結果は良いことであるはずだ」という思い込みが強い社会であればあるほど、そう考えることを「空気」として強要されるのである。
こうして、個人の持つ善意は「善意に対する安易な承認」として消費され尽くしてしまう。善意があるからこそ、問題点を指摘して、よりよく作り変えていくことが必要なのだという考え方、つまり「いい話の検証」という考え方は、今の日本では余り通用しない。
そのことが、これだけ問題点が明確に指摘されている江戸しぐさが、大した批判も受けずに、世の中に広まっている現状に繋がっている。
たかが江戸しぐさではあるが、江戸しぐさ程度のことすらまともに批判できない人たちが、もっと世の中の重大で、かつ単純な正しさでは論争できないような入り組んだ事例に対して、まともに対応できるとは思えないのだ。

など、江戸しぐさの蔓延とその背景にある日本社会の問題を指摘し、ネットユーザーの間で反響を呼んでいます。

(書評)『江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』 原田実〈著〉-朝日新聞(2014年9月7日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11337767.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11337767
江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』  
◇眉つば「ニセ歴史」にツッコミ
江戸しぐさ」なるものがはやっている。要約すると、〈すれ違う際に傘を傾けてすれ違う「傘かしげ」など、江戸時代には優れたマナーがあった。商人たちは小さなしぐさの中にも思慮深い行動哲学を込めていた。それが今や、数々の江戸しぐさが失われている。今こそ江戸しぐさに学ぶべきでござる〉といったもの。
ほほう、すばらしい伝統じゃないの。やっぱりお江戸はユートピア。今後の「お・も・て・な・し」に活用しましょう……って、おっと危ない、そのままうのみにしてはなりません。なにせこの江戸しぐさ、最近つくられた「ニセ歴史」なのですから。
本書は「傘は江戸時代には今ほど一般的ではなかったよね」といった事実確認を重ね、江戸しぐさの矛盾点を指摘。根拠もない江戸しぐさが、いかに広がったのかという「偽史拡大の歴史」までまとめた。ネット上では江戸しぐさに懐疑的な声が徐々に広がり、著者もツイッター上で積極的に検証・発信してきた。それらのツッコミが、ようやく「まずはこれを読め」と言える一冊にまとまった。
江戸しぐさが失われたのは、幕末・明治期に薩長勢力の「江戸っ子狩り」が行われたからだとか、戦争によって「隠れ江戸っ子」が途絶えてしまっただとか、当時の資料は焼き捨てられたので記録がないとか、もう完全にオカルト。記録がないなら、どうやって江戸しぐさが分かるのよ。これだけでもう眉つばもの。
しかしこの江戸しぐさ文部科学省の道徳教材をはじめ、複数の教科書会社の副読本や公民教科書に掲載されたり、テレビ番組や新聞各紙(朝日新聞でも!)で好意的に取り上げられたり、大手企業に講習として採用されたりしてきた。流言研究としては興味深いが、こうした言説が検証なしに拡散される現状には背筋が凍る。流言を元に道徳を説く、実は非・教育的な江戸しぐさの蔓延(まんえん)にご用心を。
 評・荻上チキ(「シノドス」編集長・評論家)

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星海社新書・886円/はらだ・みのる 61年生まれ。歴史研究家。著書に『オカルト「超」入門』など。

江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統(試し読みページ)
http://ji-sedai.jp/book/publication/edo.html

関連サイト)
“偽物の歴史”を教育に用いるのは、倫理の根幹を破壊する行為〜「江戸しぐさの正体」著者・原田実氏インタビュー-BLOGOS(2014年10月15日)
http://blogos.com/outline/96470/