海外で武力行使、法案に 安保法制 自公あす合意-東京新聞(2015年3月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015031902000149.html
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立憲主義 軽視のまま
<解説> 自民、公明両党の安全保障法制に関する合意案は、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を認めた昨年七月の閣議決定内容をそのまま踏襲した。憲法九条の平和主義を変質させかねない重大な問題を、改憲せずに一内閣による憲法解釈の変更で決めた安倍政権。憲法が国家権力を縛るという立憲主義の考え方を否定しているとの批判を顧みないまま、法案化を認めた自公両党の責任は重い。

安倍晋三首相は集団的自衛権の行使について「武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな場合」に限って許されると説明。直接的な戦闘への参加は否定している。だが、中東危機が発生し、ホルムズ海峡の封鎖で石油の輸入が長期間にわたり滞れば、集団的自衛権を行使する要件を満たす場合もあると強調している。

今回の与党合意案は、こうした解釈の余地を排除していない。経済危機で武力攻撃と同じ被害を受けたと判断できるなら、海外での武力行使が次々と拡大していきかねない。今回の憲法解釈や法制に、将来にわたって政権を縛る歯止めがあるとは言い難く、安倍首相が抑制的に対応したとしても、次の首相や将来の首相が引き継ぐ保証はない。だからこそ、戦後の歴代政権は憲法の平和主義を尊重し、集団的自衛権は行使できないという解釈を堅持してきたのではないか。

与党協議は二月中旬に始まり、十八日でまだ六回目。自公が対立したため、当初は長期化の観測も流れたが、途中から明らかに合意を急いだ。
「平和の党」を自負する公明党が今月二十六日から始まる統一地方選を意識し、延々と安保の議論を続ける姿は見られたくないと考えたのが大きな理由だ。だが、党内からは「こんな大転換を短い議論で決めて良いのか」と自省の声も出ている。 (大杉はるか)