「慰安婦解決を」「原発はリスク」 メルケル独首相助言-東京新聞(2015年3月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015031102000145.html
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ドイツのメルケル首相が10日、2日間にわたる日本訪問日程を終えた。安倍首相との共同記者会見や講演で、近隣諸国関係や原発政策など日本が抱える懸案に、さまざまな形で助言を繰り返した。同じ敗戦国として歩んだ経験を踏まえた言葉だけに、説得力が伴った。 (高山晶一)

注目されたのは歴史認識にまつわる発言。メルケル首相は九日の講演後の質疑で、ドイツが戦後に「過去ときちんと向き合った」ことで国際社会に受け入れられたと説明。中国、韓国と悪化した関係が続く日本に「あらゆる努力を惜しまず、平和的解決策を見いだすべきだ」と訴えた。

メルケル首相は首脳会談後の共同記者会見でも、ドイツの経験を踏まえ「過去の総括は和解のための前提だ」と強調した。

安倍首相は夏に出す戦後七十年談話について、戦後五十年の村山富市首相談話が明記した「植民地支配と侵略」「心からのおわび」などの文言にこだわらない考えを示し、周辺国から警戒されている。このタイミングでの発言は、村山談話による過去の「総括」を変質させないよう、安倍首相にくぎをさす狙いがあると受け止められた。

十日には民主党岡田克也代表と会談。日韓関係改善の障害である従軍慰安婦問題に触れて「東アジアの状況を考えると日韓関係は非常に重要。きちんと解決した方がいい」と求めた。

原発政策については、講演で福島原発事故を契機に脱原発に転換したドイツの決断を紹介。「日本という素晴らしい技術水準を持つ国で起きた事故。やはり(原発に)リスクはあることを如実に示した」と訴えた。遠回しの表現ながらも、原発を推進する安倍政権に再考を迫ったといえる。

ただ、安倍政権はメルケル首相の助言を重く受け止めようとしない。菅義偉(すがよしひで)官房長官は十日の会見で「首脳会談で、歴史にかかわるやりとりは一切なかった」と述べるなど、助言された懸案はメルケル首相の訪日の主要テーマではないと位置付けようとしている。

(全録)日独首脳会談後、両首脳がそろって記者会見
「ドイツは福島の事故を受け、脱原発を決めた。日本も多数の国民が脱原発を希望していると聞いているが、なぜまた原発を動かそうとしているのか(ドイツ語)」に対する安倍首相の答弁
「日本はエネルギーの3分の1を原発が担っている。それが止まった中で、我々はあ〜、え〜石油など化石燃料に頼っている。低廉で安定的なエネルギーを供給していくという責任を果たさなければならばならない。同時に、CO2が排出をされている状況も変えていかなければいけない中において、世界で最も厳しい基準をクリアーしたと原子力規制委員会が判断したものは科学的見地から決めていく訳ですが、再稼働していきたい」(22分45秒ごろから)

(詳報)「今、日本は戦後最大の危機を迎えている」、鎌田慧氏が会見-BLOGOS(2015年3月10日)
http://blogos.com/outline/107525/
大江健三郎
メルケルさんと安倍首相が話をしたということは、私は非常に大きい、象徴的な、あるいは現実的な意味を持っている出来事だと考えています。
メルケルさんはまず最初に、非常に高度なテクノロジーを持っている日本の人々が原発を十分にコントロールできなかったということは事実だと言われました。ドイツは福島の事故を見て、これからのエネルギーの課題として原発を用いるということは全く不可能だということを認識した、そしてそれに向かって働き始めているということです。
それに対して安倍氏は、今いくつもの原発が稼働をやめているけれども、今年のうちに4つ、あるいは5つの再稼働を行うということを言った。そしてその方針を変える気はないとも言った。

それに対して私たち民衆はどう考えているか。私たちはメルケルさんと安倍の態度を見て、現在の政治的な、人間的な意思、態度をいうものを完全に作り変えなければいけない、そのことをを今強く感じている。今までもそれに基づく行動はあったし、これから大きく広がっていくだろう、それを広げていきたいというのが私の考えです。