「僕は軟派なエロじじいだけど…」 平和だけは譲れない なかにし礼 創作生活50周年-東京新聞(2015年3月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2015030302000140.html
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昭和が終わるとともにほどなく作詞活動を休業し、念願だった小説の世界に足を踏み入れた。特攻隊帰りの兄との確執を描いた自伝的小説「兄弟」で一躍脚光を浴び、「長崎ぶらぶら節」は直木賞に輝く。

兄弟 (文春文庫)

兄弟 (文春文庫)

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小説はドラマや映画、舞台の原作となり、出演俳優らと交流した。こうして築いた人脈を生かし、自身の曲を女優が歌うアルバム「なかにし礼と12人の女優たち」を出した。「石狩挽歌(ばんか)」(泉ピン子)、「時には娼婦(しょうふ)のように」(水谷八重子)、「愛のさざなみ」(浅丘ルリ子)、「人形の家」(大竹しのぶ)、「グッド・バイ−」(桃井かおり)…。「女優として培った芸の深さ、人生経験から出てきた表現、観察、洞察力が声ににじみ出ている。歌手のカバーではこうはいかない。これほどすてきで楽しいアルバムになるとは想像もしていなかった」

アルバムに込めたのは平和への強い思いである。二十代で訳詩した「世界の子供たち」。平和の尊さ、世界共生を呼び掛けるこの曲は、中国残留孤児支援活動の同志、黒柳徹子に依頼した。発売当初、放送禁止とするテレビ局も出た「時には娼婦−」を入れたのも、「エロスも不道徳も許されるのが平和であることの象徴」との信念からだ。

なかにし礼と12人の女優たち

なかにし礼と12人の女優たち

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旧ソ連軍の侵攻で牡丹江から一家で脱出途上の列車内。機銃掃射を浴び、目の前で次々に人が撃たれ死体が窓から投げ捨てられた。線路際にごろごろ転がる死体の山。なかにし少年が目撃した地獄絵図である。

昨年十一月、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定を糾弾する詩集「平和の申し子たちへ−泣きながら抵抗を始めよう」を出版。絵本詩集「金色の翼」も出した。

「詩集を出してからまじめなイメージがついて回り、オピニオンリーダー的な扱いを受けそうになったけど忌避した。僕は相変わらず軟派なエロじじい。でも、平和だけは誰にも譲れません」